【7月4日 AFP】ロシアで2日、国内で造られたワインのみが「シャンパン」を名乗ることができ、仏シャンパーニュ(Champagne)地方産のものを「スパークリングワイン」とする法律がウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の署名を経て成立した。

 これを受けて、フランスの高級ワイン大手モエ・ヘネシー(Moet Hennessy)のロシア支部は、ロシアの酒類輸入業者に出荷を停止すると通達した。

 酒類卸売り大手ASTのレオニード・ラファイロフ(Leonid Rafailov)ゼネラル・ディレクターは3日、モエ・ヘネシーから出荷停止の通達を受けたと明らかにした。

 ラファイロフ氏によると、ASTは新法に基づき、新たな登録手続きなどを行わなければならないという。

 AFPはモエ・ヘネシーのロシア担当責任者セバスチャン・ビルモ(Sebastien Vilmot)氏に取材を試みたが、回答は得られなかった。

 一方、ビルモ氏はラファイロフ氏を通じて声明を発表し、出荷停止は問題解決までの「一時的な」措置だと説明した。

 モエ・ヘネシーは、仏高級ブランドグループLVMHのワイン&スピリッツ事業を担っており、モエ・エ・シャンドン(Moet & Chandon)やヴーヴ・クリコ(Veuve Clicquot)、ドンペリニヨン(Dom Perignon)などのブランドで知られる。

 フランスで「シャンパン」は原産地統制名称として保護されており、シャンパーニュ地方産のスパークリングワインのみが名乗ることができる。

 モエ・ヘネシーの通達は2日、モスクワに拠点を置く輸入酒類卸売業者の代表によってSNSで初公開された。

 飲料業界の専門家であるバディム・ドロビズ(Vadim Drobiz)氏は、新法には解釈の余地があるが、ロシア市場におけるモエ・ヘネシーのシェアは比較的小さく、富裕層は代替品を見つけることができると指摘した。「モエ・ヘネシーがなくても、クーデターが起きたり、ロシアのエリート層が自殺したりすることはない」

 ソーシャルメディアでは、新法をやゆするジョークが飛び交った。

 飲食店を営むセルゲイ・ミロノフ(Sergei Mironov)さんは、「今度はスコットランド人と米国人が『ウイスキー』という言葉を使うのを禁止する必要がある」と述べた。

 人気歌手のバシャ・オブローモフ(Vasya Oblomov)さんは、ロシア議会は「メルセデス(Mercedes)」という名称や地名を禁止する同様の法案を可決するかもしれないと述べた。

 プーチン政権を批判し、亡命生活を送っているミハイル・ホドルコフスキー(Mikhail Khodorkovsky)氏は、冗談だと思った自分が間違っていたと述べた。(c)AFP/Anna SMOLCHENKO