【6月29日 AFP】米国防総省は28日、米軍がイラクとシリアの国境付近で、イランの支援を受けた武装勢力への空爆を実施したと発表した。また、空爆時の映像を公開した。

 国防総省のジョン・カービー(John Kirby)報道官は、「米軍は今夜、イラクとシリアの国境付近で、イランの支援を受けた武装勢力への防衛的な精密爆撃を実施した」と述べ、空爆はジョー・バイデン(Joe Biden)大統領の指示で行われたと明らかにした。

 イラク国内にある米国の施設などは繰り返し攻撃を受けており、米国は一貫してイラク国内の親イラン勢力によるものだと主張していた。その一方で米国はイラン核合意への復帰を目指しており、微妙なタイミングでの空爆となった。

 米国は空爆による死傷者数を明らかにしていないが、在英NGOのシリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)は、武装勢力の少なくとも5人が死亡し、複数の負傷者も出たとしている。国営シリア・アラブ通信(SANA)は、子ども1人が死亡し、少なくとも3人が負傷したと伝えた。

 カービー報道官によると、米軍はシリア国内の2か所とイラク国内の1か所の武器庫などを空爆。これらの施設は、イラク国内で米国の要員と施設を無人機で攻撃してきたカタイブ・ヒズボラ(Kataeb Hezbollah)やカタイブ・サイード・アル・シュハダ(Kataib Sayyid al-Shuhada)などのイランと密接な関係がある武装勢力が使っていたものだとしている。

 イラクにはイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」への対処のため米兵2500人が駐留しており、イラクで今年起きた米軍などへの攻撃は40回を超えている。その大半は物資を運ぶ車列への爆弾攻撃だった。

 ロケット弾による攻撃も14件起きており、その一部については親イラン勢力が、米政府をイラクからの撤退に追い込む目的で犯行声明を出している。

 シリア人権監視団によると、バイデン政権下で米軍がイランの支援を受けた武装勢力にシリア国内で空爆を行ったのは、イラク東部で複数の施設を空爆して武装勢力に20人以上の死者が出た2月に続き2回目。

 映像は米中央軍(US Central Command)が28日公開。(c)AFP/Becca MILFELD