【7月9日 AFP】見た目は鶏肉だし、味も鶏肉だ。でも、イスラエルの食事客が楽しんでいるのは、ラボで育てた「肉」だ。これこそ増え続ける世界の人々の胃袋を満たす環境に優しい食材だと科学者らは主張する。

 イスラエル中部ネスジオナ(Ness Ziona)市の科学技術団地にある小さなレストランでは、「培養チキン」を使ったハンバーガーやライスロールを客が頬張っている。隣接する製造所「スーパーミート(SuperMeat)」直送の肉だ。

「うまい。味わいは最高です」と褒めるギリー・カンフィ(Gilly Kanfi)さん。大都市テルアビブから来た「肉好き」で、数か月前に予約を入れていた。「知らなければ、普通のチキンバーガーだと思ったでしょう」

「ザ・チキン(The Chicken)」という名のこのレストランは、スーパーミートのいわば試験場で、食品当局から培養肉の認可を得るまで定期的に試食会を行い、利用者の反応を探っている。

■「食革命の最先端」

 店の大きな窓から見える明るいラボでは、技術者がステンレス製の発酵用の大だるを見守っている。

「一般の人が培養肉製品を味わいながら、目の前で肉の製造・加工工程を見学できるなんて世界で初めてです」と説明するのは、スーパーミートのイド・サビール(Ido Savir)最高経営責任者(CEO)だ。

 一連の工程には、受精したニワトリの卵から取り出した細胞の培養が含まれる。タンパク質、脂肪、糖類、ミネラルやビタミンを含む植物由来の液が、細胞培養に使われる。細胞の成長が速く、ものの数時間で倍に育つという。

 コンピューターサイエンスを学び、ビーガン(完全菜食主義者)のサビール氏は、自らを「食革命の最先端」に位置付ける。地球への影響を抑えながら、食料の供給に努めたいと言う。

 開発者らは、食肉解体など残酷な過程を経ずに、しかも遺伝子操作や抗生物質を使用しないで食肉を生産する倫理的で持続可能な方法を求めている。