【6月28日 AFP】これまで科学的に知られていなかった「新しいタイプの初期人類」の骨を発見したとする論文を、イスラエルの研究チームが今週の科学誌サイエンス(Science)に発表した。人類の進化の過程に新たな光を当てる研究結果だ。

 ヘブライ大学(Hebrew University of Jerusalem)の考古学チームがテルアビブ郊外のラムラ(Ramla)付近で行った発掘調査で、これまでに分かっている現生人類(ホモ・サピエンス)を含むホモ属(ヒト属)のどの種とも一致しない先史時代の人類の骨が見つかった。

 テルアビブ大学(Tel Aviv University)のヨッシ・ザイドナー(Yossi Zaidner)氏率いる人類学者と考古学者のチームは、この骨を、発見場所の地名にちなんで「ネシェール・ラムラ・ホモ(Nesher Ramla Homo)」と名付けた。

 研究チームによると、骨は12万~14万年前のもので、「形態学的な特徴は、ネアンデルタール人とも(中略)古代型ホモ属とも共通している」。一方で、現生人類には全く似ておらず、「頭蓋骨の構造が全く異なり、おとがい(下あごの先端)がなく、歯が非常に大きい」という。

 この骨と共に、大量の動物の骨や石器も発掘された。ザイドナー氏は、「ネシェール・ラムラ・ホモが高度な石器作りの技術を有し、同地のホモ・サピエンスと恐らく交流を持っていた証拠だ」と説明した。「古代型ホモ属が人類史上これほど後期まで、ホモ・サピエンスと並んでこの地方を歩き回っていたとは想像もしていなかった」

 研究チームは、イスラエルでこれまでに発掘された化石のうち、40万年前までさかのぼる骨の幾つかはネシェール・ラムラ・ホモの可能性があると示唆している。

 この発見は、ネアンデルタール人が現在の欧州で最初に出現し、後に南方へ移動していったとする一般的な学説に疑問を投げかけるものだ。

 テルアビブ大学の歯科医師で人類学者のラヘル・サリグ(Rachel Sarig)氏は、今回の発見について「アフリカ、欧州、アジアの交差路であるイスラエルの地が、さまざまなヒト集団が混ざり合うるつぼの役割を果たし、やがて旧世界全体に広がっていった」ことを示していると指摘。欧州に移り住んだネシェール・ラムラ・ホモの小集団がその後ネアンデルタール人に進化し、アジアでも似た特徴を持つ人類に進化した可能性が高いと語った。

 映像はテルアビブ大学で見つかった骨を調べる研究者ら、27日撮影。発掘現場の写真はヘブライ大学より提供。(c)AFP