【6月30日 AFP】所構わず出現しては交尾相手を求めて木々の幹をはい回り、大きな羽音を立てて飛び交い、自動車事故を引き起こし、果ては米大統領の首に着地するなど、17年ぶりに米国人の頭痛の種となっていたセミの大発生に、ついに幕が下りようとしている。

 4月から5月にかけて米東部メリーランド州や首都ワシントン、中西部オハイオ州までの一部地域で始まった、17年周期で羽化するセミの大発生。今年も、これまで同様、さまざまな被害が出た。うまく飛べないセミたちは、建物の窓や車、人にぶつかっては、腹を立てたように激しい騒音を立てた。

 セミが最も注目を浴びたのは、6月9日に就任後初の外遊に出るため大統領専用機「エアフォースワン(Air Force One)」に乗ろうとしたジョー・バイデン(Joe Biden)大統領が、首に止まった1匹を手で払いのけたときだ。

「セミに気を付けて。私も今やられた」とバイデン氏は笑いながら記者団に語った。

 ワシントン周辺は特にセミの発生数が多く、気象レーダーに映るほどだった。バイデン氏の初外遊に同行する記者団の飛行機も、セミの群れがエンジン内部に進入した影響で離陸できず、記者らは別の機体で遅れて出発する羽目となった。

 人をかんだり刺したりはしないが、セミは数々の問題を引き起こした。

 オハイオ州シンシナティ(Cincinnati)の警察は、フェイスブック(Facebook)に「大発生のたびに、セミが原因で何件も交通事故が起きている。今年も同じだ」と投稿。ドライブ中の若い男性が、開いた窓から車内に飛び込んできたセミに驚いてハンドル操作を誤り、電柱に衝突した事故例を紹介した。男性は幸い軽傷で済んだという。

■「13年周期ゼミ」も?

 今やすでにセミの鳴き声が絶えた地域もあり、路上にはカサカサに干からびた死骸が散乱している。

 今回のセミ大発生について、コネティカット大学ハートフォード校(University of Connecticut, Hartford)のジョン・クーリー(John Cooley)氏(生態学・進化生物学)は、「発生範囲が一部地域で広がっているようだが、縮小している地域もある」と指摘。セミの発生マップを作成するプロジェクトを立ち上げた。

 メリーランド大学(University of Maryland)の昆虫学者、マイケル・ラウプ(Michael Raupp)氏は、「樹木が伐採され、土地が整備された場所では、セミは永遠にいなくなるが、農地が公園や住宅地に変わった場所や植樹された場所では、セミの数が増えている」と述べた。

 気候変動の影響については、クーリー氏はセミへの影響はあると思われるが、具体的なところはまだ分からないとの立場をとる。

 一方、ラウプ氏は地球温暖化によってセミの生息域が北上し、発生時期も現在の4~5月より早まるとみている。また、一部のセミは17年周期ではなく、13年周期で羽化するのではないかとの仮説を提唱している。(c)AFP/Ines BEL AIBA