【6月26日 AFP】中国北東部・黒竜江(Heilongjiang)省で見つかった頭骨化石が、14万年以上前の新種人類のものであることが判明したとする論文が25日、発表された。これまで現生人類(ホモ・サピエンス)に最も近いとされていたネアンデルタール人よりも現生人類に近い種とされ、人類の進化史を根本から書き換える可能性がある。

【図解】現生人類とネアンデルタール人の分岐

 頭骨化石は1933年、黒竜江省ハルビン(Harbin)で見つかったが、日本軍から守るために85年間にわたり地中に隠されていたとされる。2018年に掘り起こされ、河北地質大学(Hebei GEO University)の季強(Ji Qiang)教授の手に渡った。研究チームはこの新種を、発見地域の名前である竜江(Long Jiang)にちなんで、「ホモ・ロンギ(Homo longi)」(竜人の意)と名付けた。

 科学誌イノベーション(Innovation)に掲載された3本の論文によると、頭骨化石は少なくとも14万6000年前の中期更新世(Middle Pleistocene)のものと判明。現生人類に比べて脳容量は変わらない一方で、眼窩(がんか)は大きく、眉弓が分厚いほか、口の幅が広く、歯が大きい。木々のある氾濫原に住んでいた50歳前後の男性のものとみられる。

 論文の共著者である英ロンドン自然史博物館(London Natural History Museum)のクリス・ストリンガー(Chris Stringer)教授はAFPに対し、「この集団は狩猟採集民だっただろう」と説明。「現代のハルビンの冬の気温からして、ネアンデルタール人よりも厳しい寒さに対処していたようだ」と話した。

 研究チームは、頭骨化石が見つかった場所や、頭骨から推定される体の大きさから、ホモ・ロンギが過酷な環境に適応し、アジア全域に広まることができたと考えている。同時期にホモ・サピエンスが東アジアに到達していれば、両種が交雑した可能性もあるが、交雑が実際に起きたかは不明だ。(c)AFP