【6月26日 AFP】フランスで、自身に対し長年にわたりレイプを繰り返した夫を殺害した罪に問われたバレリー・バコ(Valerie Bacot)被告(40)が25日、禁錮4年(うち執行猶予3年)の刑を言い渡された。実刑の1年はすでに未決勾留で刑期を満たしたとみなされ、被告は収監を免れた。

 バコ被告は12歳の時、母親の交際相手だった25歳年上のダニエル・ポレット(Daniel Polette)さんに最初にレイプされた。その後、夫となったポレットさんから売春を強要されていた。

 この事件はドメスティックバイオレンス(DV)防止を訴える活動団体を動かし、被告の釈放を求める嘆願書には数十万人が署名。裁判で検察側は、被告が「被害者であることは極めて明らか」であるとして、再収監されるべきではないとの見解を示していた。量刑が言い渡されると、法廷では大きな歓声が巻き起こり、被告の友人や家族が涙を流した。

 バコ被告は、先月出版した著書「皆知っていた(原題)」で、夫の殺害に至った経緯をつづっている。ポレットさんは12歳の被告をレイプした罪で有罪判決を受け刑に服したが、釈放後に舞い戻り、再びレイプを繰り返した。被告は17歳で妊娠。アルコール依存症の母親に家から追い出されると、ポレットさんと同居を始めた。被告は裁判で、「子どもは失いたくなかった。自分には誰もいなかった。他にどこに行けたでしょう?」と訴えた。

 同じく酒浸りだったポレットさんは次第に暴力をエスカレートさせ、被告に売春を強要するようにもなった。捜査当局によると、被告は銃を突き付けられ、従わなければ殺すと何度も脅されたことが分かっている。ポレットさんが14歳の娘に対して性にまつわる質問を始めた時、バコ被告は「こんなことは終わりにしなければ」と心を決めたという。

 被告は2016年3月、またしても売春を命じられた際、ポレットさんが車内に保管していた銃で、運転席にいたポレットさんを撃ち殺害した。被告は、娘を自分と同じ運命で苦しませてはいけないと思い、「娘を救いたかった」と説明している。

 バコ被告は、4人の子のうち2人の手を借りて、ポレットさんの遺体を森の中に隠した。2017年10月に逮捕され、犯行を自供。1年後に保釈された。被告の弁護団は「25年間苦しめられてきた激しい暴力と、次は娘の番だという恐怖」が殺害の動機になったと主張していた。(c)AFP