【7月5日 AFP】片方の手に重いハンマーを持ち、もう一方の手に持ったコンクリートの塊を粉々に砕く女性たち。アフリカ中部チャドの作業場での光景だ。

 首都ヌジャメナの中心部では、多くの女性がコンクリートやセメント、れんがなどの粉砕作業に従事している。12時間労働の日もある。近くでは子どもたちが、ちりと45度の熱気の中を歩き回る。

 国連(UN)によると、最も開発が遅れている国々の中でも、チャドは下から3番目だ。女性たちは、建設廃材のリサイクル産業に欠かせない労働力だ。

 解体現場から購入したブロックを、砕石業者に販売するのは男性たち。そこで女性たちが砕いたものは、安価な資材に混ぜられ市場に出回る。

 欧州では建設作業員に対し、防じん性能の高いFFP2マスクと手袋の着用が義務付けられている。だがチャドの女性たちは、よくてショールで鼻を隠しているだけだ。

 ここで働くハビバさんは「以前は清掃員をしていましたが、年をとると仕事ができなくなり、上司に怒鳴られたり侮辱されたりして解雇されました」と粉じんで目を赤くしながら語った。「7人の子どもを養えなくなりました」

「今は1日12時間働いていますが、少なくとも誰にも怒られず、子どもたちを養って学校に通わせることができます」とハビバさん。「私は自由です」と満面の笑みを浮かべた。

 だが、チャド女性法律家協会(Chadian Women in Law Association)のテレーズ・メコンブ(Therese Mekombe)会長は「自由?」と鼻白む。そして国も国連も慈善団体も、砕石作業に従事する女性たちに関心を示していないと指摘した。

「彼女たちは子どもを養えることに、母親としての誇りを持っているかもしれない。けれども、その代償に何を払うことになるのでしょうか?」 (c)AFP/Emmanuel GIROUD