【6月30日 AFP】足の付かないプリペイド式の携帯電話を利用し、隠れ家で暮らし、支援してくれる勢力にかくまわれ、家族とは数か月以上も離れ離れに──。今年2月の軍事クーデターでミャンマーに成立した政権に抵抗を続ける活動家らは、容赦のない弾圧を逃れ、地下に潜伏しているが、逃亡生活を選んだことに悔いはないと言う。

 ミャンマー国軍は、文民指導者のアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)氏を拘束し、10年にわたって民主化を試みた同国を軍政に引き戻した。

 軍が権力を掌握すると、大規模な抗議運動が起こり、軍事政権は大量逮捕や多くの犠牲者を伴う弾圧で応酬した。

 軍事政権との戦いを続けるために家や家族を捨てざるを得なくなる可能性を覚悟していた人々もいる。活動を続けているティンザー・シュンレイ・イー(Thinzar Shunlei Yi)さん(29)もその一人だ。

 逃亡生活は「活動家としてやっていく上で予想していた」と、潜伏先からAFPの電話取材で話した。

 彼女のようにソーシャルメディアを使いこなしている活動家らは、「不安をあおる」情報を広めているという理由で軍事政権に追われている。こうした人々が他にも、インフルエンサーやセレブ、活動家、ジャーナリストを含め、数百人いる。

「自分たちがこんなふうに立ち上がるなんて思いもしませんでした。普通の人たちがデモ参加者、活動家になるなんて」とティンザー・シュンレイ・イーさんは続けた。

 一方、コーコーさん(仮名、30)にとって、逃亡生活は想像以上の厳しさだった。数か月前までは、公立病院でフルタイムの医師として働き、新型コロナウイルスに感染した患者の治療に当たっていた。

「すべてが変わってしまいました」と語った。今では、軍の病院に行くのを恐れる反クーデターのデモ参加者を対象に、当局の目に付かないようにオンライン診療を行っている。

 逮捕を免れるため頻繁に居場所を変え、4月に行われるミャンマーの新年の祭り「ティンジャン(Thingyan)」が過ぎてからは「何かを心待ちにすることはやめました」と言う。ティンジャンの時期は普通、家族と過ごすことが多い。