■植物が過去100年で一切絶滅していない世界唯一の島

 ベルギーのヘント大学(University of Ghent)の生物学者で、支援団体「フレンズ・オブ・ソコトラ(Friends of Socotra)」の会長を務めるケイ・バンダム(Kay Van Damme)氏は、数が減ってきている竜血樹は、ソコトラ島の環境問題に警鐘を鳴らす「炭鉱のカナリア」だと指摘する。

 木が1本失われるということは、あらゆる生命にとって大事な水の循環が、その分減るということだ。

 住民らによると、かつてないような勢いのサイクロンに見舞われ、木はなぎ倒されるようになった。ソコトラ島の背骨のように連なっているハギール(Hagher)山地を囲むディクサム(Diksam)高地は海抜1500メートルにあり、あちこちで枯れた竜血樹がボウリングのピンのように倒れている。

 国際自然保護連合(IUCN)は、ソコトラ島の危機的状況は気候変動によって加速度的に悪化するとの見方を示している。

 だが努力すれば、最悪の結果は遅らせることができる。島を守るため、一部の住民は自分たちにできることに力を入れている。

 アフメドさんは、村で運営しているサッカー競技場ほどの広さの竜血樹の養苗場を塀越しにのぞき込んだ。石の塀は胸の高さまであり、ヤギが跳び越えられないようになっている。

 数十本の苗木が膝の高さほどに伸びていた。島民たちが丹精を込めて育ててきた木だ。ここまで育つのに少なくとも15年はかかった。取り組みが始まったのは確かだが、これからやらなければならないことも多いとアフメドさんは話した。

 サディア・イーサ・スリマン(Sadia Eissa Suliman)さん(61)は、デトワ(Detwah)ラグーンで生まれ育った。木が切り倒され、プラスチックごみが捨てられ、稚魚が育つ環境に壊滅的な被害を与える底引き網漁が行われるのを目にしてきた。

 今は村が決めた禁漁に協力し、塀の中で木を育てる活動とごみの投棄対策の資金を集めている。

 バンダム氏は、「ソコトラ島は世界で唯一、私たちが生息を把握している範囲で爬虫(はちゅう)類や植物、鳥が過去100年間でどれ一つ絶滅していない島なのです。これからもその状態を保っていかなくてはなりません」と語った。

 映像は竜血樹とソコトラ島の自然。2月に取材したもの。(c)AFP/ Peter Martell