【6月28日 AFP】イエメンのソコトラ(Socotra)島には、傘の形をした樹齢数百年のリュウケツジュ(竜血樹)が岩だらけの尾根沿いに生えている。竜血樹は、インド洋に浮かぶこの群島の極めて豊かな生物多様性のシンボルだが、今は環境危機に警鐘を鳴らす存在でもある。

 竜血樹は、年々激しさを増しているサイクロンで倒され、若木は増え過ぎたヤギに食べられている。生物多様性ホットスポット(生物多様性が高く、絶滅危惧種が生息している地域)であるこの場所は、砂漠化の危機にある。

 ソコトラの観光ガイドで数学教師でもあるアドナン・アフメド(Adnan Ahmed)さんは、この島で有名な動植物に情熱を傾けている。「樹木は水をもたらすので、とても重要です」と語る。

 アラビア半島とアフリカ大陸の間のターコイズブルーの海に浮かぶソコトラ島は、イエメン沿岸から南に約350キロに位置し、5万人強が住んでいる。イエメン本土の内戦の影響はそれほど及んでいない。

 ソコトラ諸島は2008年に国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産(World Heritage)に登録された。ユネスコが全長130キロの本島を世界で最も生物多様性に富み、かつ独特な土地の一つと表現しているように、ソコトラは「インド洋のガラパゴス」とも呼ばれている。

 アフメドさんによると、島民は昔から竜血樹を切り倒してまきに使うことは避けてきた。この木のおかげで降雨が保たれ、血のように赤い樹液には薬効があると信じるからだ。

 だが科学者や島民らは、今後数十年で多くの木が枯れてしまうだろうと警告している。地球温暖化の影響で激しさを増しているサイクロンに加え、侵入種や過放牧(草地の再生能力を超えた家畜の放牧)などの影響で砂漠化が進んでしまうという。

 アフメドさんによると、竜血樹が成木になるまでには50年近くかかる。