【6月23日 AFP】人類が温室効果ガスの排出を抑制できたとしても、気候変動により地球上の生命の在り方は今後数十年で根本的に変化する──AFPは、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書草稿を独自に入手した。

 IPCCはこの中で、種の絶滅、疾病のまん延、命を脅かすほどの酷暑、生態系の崩壊、都市に迫る海面上昇の脅威といった気候変動による破滅的な影響は加速しており、今生まれた子どもが30歳になる前に、明らかな影響が出てくるのは避けられないと指摘している。

「最悪の事態はまだこれからだ。われわれの子どもや孫の生活への影響は、現在われわれが受けているものを大きく上回る」としている。

 4000ページに及ぶ報告書は、気候変動が世界に与える影響について、これまでで最も包括的にまとめたものとなる。

 報告書は、重要な政策決定に影響を与えることを目的としているが、公開は2022年2月を予定している。今年は気候、生物多様性、食料システムに関する国連のサミット開催が予定されており、科学者からは報告書の公開が遅すぎるとの声も上がっている。

 2015年に200か国近くが採択した地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」では、気温上昇を2度に抑える、可能ならば1.5度に抑えるという目標を掲げている。

 報告書の草稿は、気温上昇が1.5度以上となるだけでも「数世紀に及ぶ、着実に深刻度が増す影響を引き起こし、不可逆的な結果を生むこともある」と指摘している。

 世界気象機関(WMO)は先月、地球の年間平均気温が2026年までに少なくとも1回、1.5度以上の上昇を記録する確率は40%との予測を発表した。

 IPCCの報告書草稿は、「気温上昇が1.5度に抑えられたとしても、多くの生物が適応できる範囲以上の環境変化がある」としている。

 慢性的な飢餓に直面する人は2050年までに数千万人増える他、社会格差が拡大すると極度の貧困に陥る人が10年以内に1億3000人増える恐れがあるという。

 また2050年には、気候危機の最前線にある沿岸部の都市では何億人もが、海面上昇を原因とする洪水の危機や増加する高潮に直面する見込みだ。

 都市部では干ばつによる深刻な水不足が起こり、その影響を受ける住民は気温上昇幅が1.5度なら約3億5000万人、2度なら4億1000万人増えるとされる。

 さらに気温の上昇幅が2度になると、生命の危険がある極度の熱波に見舞われる人は4億2000万人増える。(c)AFP/Marlowe Hood with Patrick Galey and Kelly Macnamara