【6月27日 AFP】西アフリカ・セネガルののどかな村にあるカトリック修道院で毎日7回、神をたたえる僧たちの歌声が流れる。伴奏に使われているのは、ハープに似た調べの民族楽器コラだ。

 首都ダカールのすぐ東にある、クールムッサ(Keur Moussa)修道院。果樹とハーブが生い茂る25ヘクタールの敷地の一角に、修道僧たちがコラを製作する工房がある。

 クールムッサ修道院のコラ作りは、イスラム教徒が大半を占める周辺地域のみならずカトリック圏で評判だ。

「この楽器のおかげで、神のみ言葉が栄(は)えます」と語る修道院長のオリビエマリー・サール(Olivier-Marie Sarr)神父(45)。「コラは橋に似ています。何かを乗り越え、魂を高めるときに手助けしてくれます」

■コラ販売は「信仰の一環」

 21弦の楽器コラは長い間、西アフリカの「グリオ」と呼ばれる伝統的な歌い手、語り部たちに愛用されてきた。長い棹(さお)と牛などの革を張った共鳴箱が特徴で、両手で爪弾く。

 1963年に同修道院を設立した仏ベネディクト会の修道士たちは、コラの音色に魅せられ、グレゴリオ聖歌の伴奏でオルガンの代わりにコラを使った。そして間もなく、コラの製作も始めた。

「クールムッサ製のコラを世界中で見かけます」と誇らしげに語る、マリー・フィルマン(Marie Firmin)神父。彼ともう一人の修道士が年間40~50台のコラを製作する。

 コラの販売は修道院の収入の3分の1を占める。最高品質のコラには、1台1000ユーロ(約13万円)ほどの値が付くといい、プロの音楽家からの需要も高い。多く売れているのは欧州だが、アフリカの他の修道院も大口の買い手だとフィルマン神父。「私たちの信仰の一環です」

■「神との調和」

 セネガル人口の95%はイスラム教徒で、キリスト教徒はごく少数派だ。クールムッサの修道士約35人のほとんどはセネガル人だが、ギニア、トーゴ、ベナン、カメルーン、ガボンなどアフリカ・フランス語圏から来た修道士もいる。

「修道生活は神のおぼしめしです」と語るベルナール神父は、カメルーン出身。伊ローマで長年研さんを積んだ。修道院の選択は個人的な好みで決まるが、修道会の雑誌や刊行物に影響されることも多いと言う。

 カトリック教会の聖職者の間で、クールムッサ修道院の音楽は名高い。「私がここに来たのも音楽が決め手でした」とベルナール神父。

 修道院長のサール神父は、コラをクールムッサの象徴に据えている。その「美しい」調べが、修道生活の厳しい日課に寄り添っていると言う。「おかげで私たち自身の間に一定の調和が築かれます。そして、神との調和も」

 映像は5月19日撮影。(c)AFP/Emmet Livingstone