【6月18日 AFP】内戦が続く中東イエメンの漁師、ファレス・アブドルハキーム(Fares Abdulhakeem)さんらは、その日も海に出て魚を取っていた。いつもと変わらぬ一日だった──クジラの腹からお宝を見つけるまでは。

【動画】見つかった龍涎香の映像やアブドルハキームさんのインタビューも

 アブドルハキームさんら35人の漁師は2月、南部の都市アデン(Aden)の沖合約26キロの海上で漂流しているマッコウクジラの死骸を見つけた。

 死骸を岸まで運び、腹を開くと、中から「浮かぶ金塊」と呼ばれる龍涎香(りゅうぜんこう、アンバーグリス)を発見した。龍涎香は、マッコウクジラの腸内に生成する珍しい物質で、香料として利用されている。

 アブドルハキームさんらが見つけた重さ127キロの龍涎香は、アラブ首長国連邦(UAE)の実業家が150万ドル(約1億6500万円)以上の価格で買い取った。国連(UN)の基準で世界最貧国の一つであるイエメンで暮らす多くの人にとって、想像もつかない額だ。

 売却金の一部は地元の生活困窮者の支援に使い、残りは漁師仲間で分け合った。

 お宝の発見は、漁師たちの人生を変えた。

「船を買った人もいるし、家を建てたり、修理したりした人もいる。私は家を建てて、自分の未来を築いた。(中略)ここ(イエメン)の生活環境はいつも厳しいので」と、アブドルハキームさんはAFPに語った。

 漁師仲間の一人は、「私たちは素朴な人間だ。毎日その日の獲物を取りに行く漁師だ。その日の分の魚が取れたら、神に感謝する。神は突然、これを私たちにくださった」と語った。

 国連によれば、イエメンは内戦によって、世界で最悪の人道危機にあり、数万人が殺害され、数百万人が避難し、総人口3000万人の3分の1が何らかの支援に頼っている。

 アブドルハキームさんらにとっては、海が支援となった。

「この海なしではやっていけない。海への愛が私の血に流れている」とアブドルハキームさんは話した。(c)AFP