【6月24日 AFP】現代の都会のせわしない暮らしに疲れた中国の若者たちの間で、「寝そべる」という意味の「タン平(タンピン、タンは身へんに尚)」という言葉がSNSの流行語となっている。彼らは、報われない仕事に縛られた日常を捨てようとしている。

 格差は広がり、生活費は高騰する中国で、伝統的な意味での成功は手の届かないものになりつつある。そうした中から出てきたのが、最小限の仕事しかしない生き方を選ぶ若者たちだ。彼らは親の世代が抱いていた、がむしゃらな野心とは真逆を向いている。

 大勢の応募者を押しのけて仕事にありつき、長時間労働に耐え、人口過密都市で法外な家賃を払うという苦労の連続。これを避けるための道が「寝そべり主義」だ。

 4か月にわたって研究技師の仕事を探していた王さん(24)は、大学の同級生が家業を継いだことを知って、自分には「寝そべり」がピッタリだと悟った。

「履歴書を送るなんて、大海に沈んだ針を探すようなことでした」と語る王さん。フルネームは明かさなかった。「もっとリラックスした生活がしたいだけ。寝そべりは、ただ死ぬのを待つことではありません。仕事はするけど、無理はしないということです」

 中国の若者はSNSを通じて常時、新しい言葉や表現を探している。「寝そべり」は、掲示板サイトの貼バ(ティエバ、バは口へんに巴、Tieba)で匿名の投稿者が「寝そべりは、賢者の行動だ」と書いたのが始まりとされる。

 その意味をめぐる議論が、中国版ツイッター(Twitter)の微博(ウェイボー、Weibo)で圧倒的なアクセスを集めた一方で、学者や国営メディアは苦言を呈した。

 人材業界で働く林さん(24)は「若者たちは、車やマンションを買い、結婚して子どもを持つという『人生の勝ち組』になれません。だから目標を下げて、欲求を減らすことを選ぶのです」と言う。

 フリーランスのルーシー・ルー(Lucy Lu)さん(47)は「基本的な欲求が満たされ、もっとリラックスした生き方ができるなら素晴らしいことではないでしょうか」と語った。