【6月17日 AFP】環境分野のノーベル賞(Nobel Prize)とも呼ばれる「ゴールドマン環境賞(Goldman Environmental Prize)」の今年の受賞者の一人に、絶滅が危惧されるセンザンコウの保護に取り組む、ベトナム人のグエン・バン・タイ(Nguyen Van Thai)氏(39)が選ばれた。数十億ドル規模の違法取引から、センザンコウ1000匹以上を保護する活動が評価された。

 センザンコウの肉は、中国と東南アジアでは滋養強壮やがん治癒効果があるとの迷信から、珍味として重宝されている。

 NPO「セーブ・ベトナムズ・ワイルドライフ(SVW)」代表のタイ氏は、センザンコウの保護活動の最前線に立ち、野生動物の不正取引の主要拠点であるベトナムが直面する深刻な問題について、世界に警鐘を鳴らしてきた。

 ゴールドマン環境賞は、「継続的かつ重要な取り組み」で環境の保護・改善に功績のあった草の根の活動家を、毎年6人表彰している。

 受賞者発表前にAFPのインタビューに応じたタイ氏は、野生動物の不正取引の問題を人に理解してもらう手助けをするのは、「若者やベトナムの地域社会を巻き込み、森林や野生動物、環境の保護に共に取り組むことにつながる」と語った。

 タイ氏は、「調査結果と設置型カメラの画像に基づくと、ベトナムに生息する野生のセンザンコウは過去15年間で90%以上減少したと考えられる」と指摘している。

 ベトナムにあるSVWの保護施設では、スタッフやボランティアがセンザンコウを元気になるまで世話し、その後、自然に返す。これまでに1600匹近くを救ってきた。

 タイ氏によると、スンダセンザンコウ(マレーセンザンコウ)とミミセンザンコウのうち、後者がより深刻な状況にあり、ベトナムでは絶滅のリスクが高い。

 SVWの施設はミミセンザンコウの繁殖計画を進めており、新たに生まれたセンザンコウを、後に自然に返すことも目指している。

 タイ氏は今年の「アジア部門」の受賞者に選出された。「島しょ国部門」には石炭火力発電所13基の建設計画中止に貢献した平田仁子(Kimiko Hirata)氏が選ばれた。

 映像はセンザンコウの保護活動を行うタイ氏。1月と2月に撮影された資料映像。6月15日提供。(c)AFP