【6月16日 AFP】韓国で横行する女性へのデジタル性犯罪に当局が適切に対処していないとする報告書を、人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が16日に発表した。性犯罪の被害者たちは自殺を考えるほど深刻な状況に追い詰められている。

 世界12位の経済大国で世界有数の技術大国でもある韓国は、依然として男性優位社会で、女性の人権問題への取り組みは今なお不十分だ。

 性的な画像や動画を相手の同意を得ずにインターネットで公開するデジタル性犯罪は、同国では非常に大きな問題になっている。スパイカメラ(隠し撮り用小型カメラ)を使った公共の場での盗撮「モルカ」や、元パートナーに恨みを抱く元恋人や元夫がプライベートな性行為の動画を無断で撮影し、流出させる「リベンジポルノ」が後を絶たない。

 HRWの報告書をまとめたヘザー・バー(Heather Barr)氏は、男性が大半を占める韓国の刑事司法制度の関係者は「多くの場合、こうした問題が極めて重大な犯罪であることを単に理解していないか、認めていないようだ」と指摘している。

 報告書によれば、2019年には韓国でデジタル性犯罪事件の45%近くが不起訴となっている。一方、強盗事件と殺人事件で不起訴になったのは、それぞれ19%、27.7%だった。

 さらに、デジタル性犯罪で加害者に有罪判決が下されても、昨年は80%近くが「執行猶予付き判決か罰金刑、または執行猶予付きの罰金刑」を言い渡されただけだった。

 モルカの横行を受けて、女性警察官が公衆トイレを定期的に点検するようになったが、HRWの調査に協力した女性たちは、公衆トイレは一切使わなくなったと話している。

 ある女性はバー氏に対し、男性の雇い主からもらった時計を寝室に置いていたところ、後になって、その時計に仕込まれたカメラで盗撮された映像が1か月以上もその男性の元に送信されていたことが分かったと語った。

 デジタル性犯罪の被害者は多くの場合、恥ずかしさでいたたまれなくなり、社会的にもスティグマ(負のレッテル)を貼られ、「驚くほど多く」の女性が自殺を考えたことがあるとHRWに明かしている。

 バー氏は、女性や少女に対する「社会に浸透した有害な考え」がこうした問題の根本にあると指摘。韓国政府は、「女性と男性は平等であるという明確で強いメッセージを打ち出していない」と批判した。(c)AFP