【6月15日 AFP】フランスの原子炉メーカー、フラマトム(Framatome)は14日、米メディアが放射性物質漏れの可能性を報じた中国南部の原子力発電所について、「機能上の問題」を解消しつつあり、安全基準内で放射性希ガスを大気中に放出したと発表した。

 米CNNは先に、広東(Guangdong)省にある台山原子力発電所(Taishan Nuclear Power Plant)について、米政府がフラマトムから「放射性物質による差し迫った脅威」に関する警告を受け、過去1週間、放射性物質漏れについて状況を検討したと報じた。フラマトムは同原発の一部を所有している。

 だが、CNNが伝えた匿名の米政府関係者の話によると、同原発は「危機的レベル」には至っていないとジョー・バイデン(Joe Biden)政権は判断している。

 フラマトムの親会社であるフランス電力(EDF)は、同原発の原子炉1号機の一次冷却系で希ガスの濃度上昇があったと発表した。だがEDFの広報担当者は、「炉心融解のような事故シナリオにはなっていない」と述べ、さらに「われわれが話しているのは汚染ではなく、(希ガスの)管理された放出についてだ」と付け加えた。

 希ガスは化学反応性の低い元素で、今回発生したのはキセノンとクリプトン。広報担当者によると、一部の燃料棒のコーティングが劣化してガスが漏れ出したという。ガスは回収され、放射性物質を除去する処理をした上で放出されたが、これは「規定に従った」通常の措置だという。

 一方、エネルギー関連コンサルティング企業ランタオグループ(Lantau Group)のデービッド・フィッシュマン(David Fishman)氏は、燃料棒に亀裂が入ると、冷却装置内の「通常は核分裂物質が存在しない場所」に少量の核分裂物質が放出される可能性があると指摘した。

 同氏はAFPに対し、「燃料棒の破損や亀裂は核燃料産業ではごく普通に起きている。もちろん望ましいことではないが、珍しい現象ではない」と述べた。

 中国国家エネルギー局によると、中国の年間電力需要に占める原発による電力は2019年には5%未満だったが、政府が2060年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指している中、その割合は増加すると予想される。

 中国では現在、47基の原子炉が運転中で、その総発電容量は米国とフランスに次ぐ世界第3位の48.75ギガワットとなっている。(c)AFP/Helen ROXBURGH