【6月21日 AFP】韓国南東部・奉化(Bonghwa)郡の山中。核爆発にも耐えられるように設計されたトンネル内に5000種類近い野生植物の種子が保管され、気候変動や自然災害、さらには戦争が起きた場合に絶滅しないよう守られている。

 研究者らは、人口増加、環境汚染、森林伐採などが原因で植物の絶滅が恐るべき速さで進んでいると警告する。

 国立白頭大幹樹木園(Baekdudaegan National Arboretum)にある種子貯蔵庫センター(Seed Vault Center)には、4751種類の野生植物から採取された10万近い種子が保管されている。「この世の終わりのような惨事」が起きても失われることはないと、同センターのイ・サンヨン(Lee Sang-yong)所長はAFPに語った。

 イ所長によれば、同様の施設は世界で他に1か所しかない。ごく一般的な種子銀行では、預けられたサンプルがさまざまな目的で随時引き出される。一方、種子貯蔵庫での保管は半永久的で、利用されるのは絶滅を防止する最後の手段としてのみだ。

 貯蔵庫センターは、韓国の情報機関・国家情報院(National Intelligence Service)によって高度のセキュリティー施設に指定されている。周囲に鉄条網と数十台の監視カメラがあり、撮影は制限され、警察官が定期的に見回っている。

 建物の中に入り、エレベーターで8階ほど降りると、コンクリートの巨大なトンネルに到着する。重い鋼鉄製の扉で守られた保管室と、中にある手動式の移動ラックは、気温は氷点下20度、湿度40%に保たれ、種子の生命が維持されている。

 この貯蔵庫には、朝鮮半島の植物群の大半のサンプルが保管されているが、200万の種子サンプルの貯蔵が可能なため、他国にもスペースを提供し、カザフスタンやタジキスタンなどが利用している。

 保管を委託した側は、預けたサンプルの所有権を保持し、任意に引き出せるが、種子の保管は絶滅を防ぐことが目的であるため、「最も理想的なのは、種を引き出さなくても済むこと」だとイ所長は指摘した。

 地球滅亡にあらがう役目を担っている施設だが、韓国は、1950年に北の隣国に侵略されている。これ以後、北朝鮮は核兵器とミサイルの軍備を増強してきた。

 イ所長によれば、施設は韓国で「最も安全な場所」に建てられた。マグニチュード(M)6.9レベルの地震や、さらには核攻撃にも持ちこたえる設計だという。

「地理的に非常に安全だ」と同氏は話した。「地下46メートルにトンネルを築き、戦争や核の脅威が及ばないようにしています」