【6月14日 AFP】南極大陸(Antarctica)に初めて到達した人類はポリネシア人の船乗りたちだった可能性が高いとする新たな研究結果を、ニュージーランドの研究チームが発表した。西洋人探検家の南極大陸発見よりも数百年前のことだという。

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 この研究では、ニュージーランドの先住民マオリ(Maori)と南極大陸との関わりを知るため、口承記録や先住民の歴史的手工芸品、非学術的資料などのいわゆる「灰色文献」を徹底的に調査した。

 プロジェクトを率いたNZ政府の研究機関「マナアキフェヌア(Manaaki Whenua)」のプリシラ・ウェヒ(Priscilla Wehi)氏は、「(ポリネシア人と)南極大陸や南極海との関わりが、伝統的な航海の最初期からあったことが確認できた。その後も欧州人主導の航海や探検、現代の科学調査、漁業などへの参加を通じて、数世紀にわたり(関わりは)続いてきた」と述べている。

 ポリネシア人たちは、カヌーで広大な太平洋に点在する島々を正確に行き来していた、歴史上屈指の高い航海術の持ち主として広く知られる。

 ニュージーランド王立協会誌(Journal of the Royal Society of New Zealand)に先週発表された研究論文によると、ポリネシア人が南極大陸に到達したのは1820年代の西洋人探検家による南極発見のはるか以前で、14世紀にマオリがニュージーランドに到達したより早かったとみられる。

「島々を航海するポリネシア人の物語の中に、フイ・テ・ランギオラ(Hui Te Rangiora)一行が恐らく7世紀初頭に、テ・イビ・オ・アテア(Te Ivi O Atea)号で南極海に乗り出したという話があることを発見した」とウェヒ氏は述べた。

 この航海についての口承には、「霧が立ち込め、太陽が見えない暗くかすんだ場所」や、「草木の生えていない」氷山のような山々が「空を貫いている」といった表現が登場する。マオリの彫刻や織物にも、はるか昔の南極航海の伝承を裏付けるものがあると論文は指摘している。

 ウェヒ氏は、複数のマオリの伝承を照合することで、主流となっている西洋の男性探検家たちの記録を超えた幅広い視点で南極大陸の歴史を見ることが可能になるとしている。(c)AFP