【6月13日 AFP】インド西部ムンバイ(旧ボンベイ)のスラムで、アショーク・クルミ(Ashok Kurmi)さん(37)はピエロの格好をして、子どもたちに新型コロナウイルス対策を広めている。

 製薬会社に勤務するクルミさんは、休日になると真っ赤な衣装に身を包み、虹色のかつらをかぶり、顔を白く塗り、ピエロに変身。ボランティアで、公共の場の消毒やマスクの配布など新型コロナウイルス感染症(COVID-19)防止対策の啓発活動に取り組んでいる。

「スラムの住民、特に子どもは、個人用防護具(PPE)を着た自治体職員を怖がる」とクルミさんはAFPに語った。

「違う格好をすることで、住民を怖がらせることなく、新型コロナウイルスに対する関心を高め、ちょっとだけ、彼らの手助けができる」

 クルミさんは昨年、サンタクロースやミッキーマウス(Mickey Mouse)、ドラえもん(Doraemon)、マーベル(Marvel)作品のスパイダーマン(Spiderman)などさまざまな格好をしてみたが、ピエロが断トツで人気だったという。

 最近訪れたインド最大のスラム、ダラビ(Dharavi)では、子どもたちが「ジョーカー、ジョーカー」と言いながら、手を消毒してもらおうとクルミさんの後をついて回っていた。

 クルミさんは衣装とポスターの助けを借りて、正しい手の洗い方とマスクの着用方法を子どもたちに根気強く教えている。

「製薬会社で15年間働いているが、社会奉仕活動に打ち込んでいる」とクルミさんは話す。

 クルミさんは、月収のおよそ3分の1に相当する約1万5000ルピー(約2万2500円)を衣装やメーキャップ用品、消毒機器などの購入に充てている。

 インドの新型コロナウイルスの感染者は2800万人以上、死者は30万人以上となっている。

 ダラビのような人口過密地域の訪問は危険を伴うが、クルミさんの決意は揺るがない。

「新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)が収束するまで、ピエロの格好で訪問し、人々の助けになりたい」

 映像は2日撮影。(c)AFP