■刺激をくれる存在は故郷の女性たち

 ジャカルタに出て来る前、2018年に発表したシングル曲「School Revolution(スクール革命)」がヒットした。この曲では、インドネシアの厳格な教育制度について歌っている。VOBが最近作る曲のほとんどは、女性の役割や環境問題がテーマだ。

 保守的な社会通念を批判しているVOBの曲は、国境を超えて共感を呼び、世界中にファンを広げた。そう指摘するのは、インドネシアのメタル音楽について研究しているユカ・ディアン・ナレンドラ(Yuka Dian Narendra)氏だ。「このバンドは、インドネシアにいるイスラム教徒の多数の女の子の気持ちを代弁している」

 VOBが世界的な注目を浴びるきっかけとなったのは、カバー演奏したオンライン動画が大物ミュージシャンたちの目に留まったことだ。その中には、元「ニルヴァーナ(Nirvana)」のベーシスト、クリス・ノヴォセリック(Krist Novoselic)や「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)」のベーシストのフリー(Flea)、「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against the Machine)」のギタリスト、トム・モレロ(Tom Morello)らがいる。

「思ってもみなかった」とクルニアさんは話し、「夢かと思った」と振り返る。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために他国への渡航が制限されてからは、「WOW UKフェスティバル(WOW UK Festival)」や「グローバル・ジャスト・リカバリー・ギャザリング(Global Just Recovery Gathering)」など、オンライン開催されたイベントで演奏してきた。

 3人の目標は、いつか米国の野外音楽フェスティバル「コーチェラ・バレー・ミュージック&アートフェスティバル(Coachella Valley Music & Arts Festival)」に出演することだ。憧れのバンド「システム・オブ・ア・ダウン(System Of A Down)」とコラボレーションする夢も持っている。

 一方で、これからも刺激を受け続ける存在として3人が挙げたのは、故郷の女性たちだ。多くの女性が骨の折れる農作業に従事している。

「地元の女性たちは、二流市民として扱われている」とドラマーのエウス・シティ・アイシャ(Euis Siti Aisah)さんは話した。「でも私たちの村には、ものすごくタフなレディーが大勢いる」 (c)AFP/Agnes ANYA