【6月19日 AFP】イスラム教徒の女性がかぶるヒジャブ姿でヘッドバンギング。インドネシア人の小柄な女性メンバー3人によるヘビーメタルバンド「ボイス・オブ・バチェプロット(Voice of BaceprotVOB)」は今や世界の大物ロックスターにも注目される存在だが、ここまで来るのに試練も味わった。それは、親を説得して活動を認めてもらう闘いだった。

 3人は世界最大のイスラム人口を持つ自国内で開催される音楽フェスティバルに何度か出演して腕を磨いてきた。バンド名は「やかましい声」を意味する。バンドを結成したのは2014年で、3人は10代前半だった。

 保守的な土地柄の西ジャワ(West Java)州の故郷を出て今に至るまでは長い道のりだった。やりたいことを追求しようとする3人は、近隣住民や家族からの非難を乗り越えてきた。

「メタル音楽のおかげで、自分の意見をはっきり言う勇気と、人と違っていても恐れない自信を持てるようになった」。ベースのウィディ・ラーマワティ(Widi Rahmawati)さん(19)はAFPのインタビューで話した。

「ステージの上では自分を表現できる。周りから押し付けられる社会常識のようなものを気にしなくていい」

 社会常識に従っていれば、3人とも、高校卒業後にすぐ結婚しなければならないはずだった。

「両親に、本なんか読んでも無駄だと言われた。まして、音楽をやるなんて」と眼鏡を掛けたフィルダ・マーシャ・クルニア(Firda Marsya Kurnia)さん(20)は言う。バンドではボーカルとギターを担当している。

「親が言うには、結婚したら、夫に本を読むより料理や家の掃除をしろと言われるからって」

 固い決意に、やがてそれぞれの親たちも折れた。3人は晴れて昨年、才能を生かすため首都ジャカルタに移り住んだ。

「私たちにとって音楽は、ハッピーになって、その気持ちを他の人と分かち合うための場」だとクルニアさんは言う。「聴いてくれる人たちが私たちの音楽から、何かメッセージのようなものを受け取ってくれるとうれしい」