【6月12日 AFP】アフリカ南部モザンビークの村。週に2回、大きなマンゴーの木陰に数十人の子どもたちが集まる。一見すると、ただ遊んでいるようだが違う。これは、同国の北部で3年前から続くイスラム過激派勢力による残虐行為を目撃した子どもたちの心の傷を癒やすための集いなのだ。

 メンタルケアの専門家たちが子どもたちに、心に浮かんだことを絵に描くよう呼び掛ける。喜々として応じているように見える子もいる。

 アルベルト・アルメイダ(Alberto Almeida)さん(17)は幼い子どもたちに交じり、軍用銃の絵を描き、その上に赤いバツ印を付けた。そして、母語のマクワ語で「銃は要らない」と書き添えた。

 故郷ビリビザ(Bilibiza)村は沿岸部のキサンガ(Quissanga)郡にある。アルメイダさんは、2020年後半に襲撃を受けた村を脱出した日のことを淡々と話してくれた。

「家を離れるしかなかった」と言う。故郷に戻って学業を終え、教師になる勉強をしたいと続けた。「戦争はつらい」

 ビリビザ村の大部分は燃え、住民は命からがら逃げるしかなかったと語った。

 村の焼き打ちは、住民に対する斬首と同じく、「イスラム国(IS)」系武装勢力の常とう手段だ。過激派は2017年以降、モザンビーク北部カボデルガード(Cabo Delgado)州の各地を襲撃している。

 アルメイダさんの両親と3人のきょうだいは戦闘員に捕らわれた。アルメイダさんは5日間歩き続け、主要港湾都市ペンバ(Pemba)にたどり着いたが、その時には両足は傷だらけで腫れ上がっていた。

 現在は、ペンバから西に50キロのメトゥージ(Metuge)の避難民キャンプで叔父と暮らしている。キャンプは、過激派の襲撃を受けて避難を余儀なくされた人々を3万人以上受け入れている。これまで過激派による襲撃で命を奪われた人は2800人以上に上る。