【6月5日 AFP】ミャンマー南東部のジャングルで、軍事政権の打倒を目指し訓練を受けている若い男性が、木に描かれた標的に向かってライフルを撃った。反動で後ろに倒れそうになると、引きつった笑い声が上がった。

 武器を持って男性の後ろで順番を待っているのは、ミャンマー各地の都市を出て、反政府勢力が掌握するジャングルにやって来た人たちだ。現在は、反政府武装組織「カレン民族同盟(KNU)」のメンバーから軍事訓練を受けている。ミャンマーには他にも、同様の反政府民族組織が20以上存在する。

 タイと国境を接するカイン(カレン、Karen)州の木々が茂る丘にある訓練キャンプでAFPの取材に応じたミンさん(仮名、23)は、「銃声なんて聞いたこともなかった」と話した。

 国軍によるクーデターと反体制派に対する激しい弾圧が始まってから4か月。銃声には「ずいぶん慣れた」と言うミンさんは、「軍による独裁に終止符を打つ」のは、抗議デモではなく銃弾だと確信するようになったと語る。

 有志の参加者らは、縄を伝って泥だらけの小川を渡ったり、やぶの中に身を隠したり、負傷した仲間を安全な場所に運んだりと、ジャングルでの戦い方の訓練を受ける。休憩時間には木のベッドで休み、スマートフォンを眺める。

 ミンさんと同様の怒りを感じ、行動に移した反クーデターのデモ参加者は多い。その正確な人数の推定は難しいが、専門家の間では、戦闘訓練を受けるため数百人が反体制派の掌握地域に赴いたのではないかと言われている。

 しかし相手は反政府武装組織との戦闘で鍛えられてきた東南アジア有数のミャンマー軍。反体制派にとって不利だ。ミャンマーを拠点に活動していたアナリストのデービット・マシソン(David Mathieson)氏は、戦闘になれば多くの血が流れる壊滅的な事態になるだろうと指摘する。(c)AFP