【6月5日 People’s Daily】午前10時、中国上海市を出発したコンテナ船「長航集運0329号」は、湖北省(Hubei)宜昌市(Yichang)の臨江坪停泊地に止まって、葛洲壩の閘門(こうもん)を通過するのを待っていた。席映軍(Xi Yingjun)船長はスマホの「船E行」というアプリで汚染物の処理申請を提出した。10人余りの乗組員の10日間の航海で、2.5立方メートルの生活排水が発生した。

「出発、2列目の待機エリアへ進め!」。停泊地付近を航行していた汚染物回収船「宜昌環保9号」の張首之(Zhang Shouzhi)船長は、「浄小宜」というミニプログラムで受注した後、航海指示に従って航行を誘導した。

 10分後、2隻の船が並んで停泊し、生活排水がポンプで汚染物回収船に回収された。汚染水の回収の完了の後、2人の船長のスマホには、汚染水の回収時間や量を明記した船舶汚染物回収電子連続伝票が届いた。

 宜昌市は全長232キロの長江沿岸線を有し、年間約6万隻(回)の船舶が通行し、大量の船舶が長江に停泊するのが常態化している。宜昌市水路交通法執行支隊の胡継学(Hu Jixue)支隊長は、時間節約やコスト削減のため、船舶の多くは閘門が開くまでに汚染物の回収を済ませている。「長江の宜昌区間は航行船が多く、船舶は接岸しないが、滞留時間が長く、汚染物の回収、中継運送、処理作業の監督管理のプレッシャーが大きい」と記者に語った。

 生活排水に加え、航行船からは生活ごみと含油廃水も発生する。これらの汚染物には異なる監督管理部門が関与している。生活排水は住房城郷建設部門に、生活ごみは都市管理部門に、含油廃水は環境部門に管理され、船舶と港自体はそれぞれ海事と交通部門に帰属している。「以前はお互いに情報が共有できておらず、汚染物はどこからどこに行ってるのか、誰もはっきりと言えなかった」と、胡支隊長は述べた。

 宜昌市は2019年、船舶汚染物の共同管理情報システム「浄小宜」を発表した。このシステムはアプリケーション、バックグラウンドデータベース、大画面表示の3つの部分で構成され、船舶汚染物の回収、中継運送、処理のためのツールであると同時に、多部門の共同監督管理のためのオープンプラットフォームでもある。

 正午近く、「宜昌環保9号」回収船にはごみが満載されていた。張船長は再び「浄小宜」を開き、60立方メートルの生活排水の中継運送申請を提出し、宜昌市紅聯船舶汚染物中継運送埠頭(ふとう)の楊紅新(Yang Hongxin)調整員が受注した。楊調整員は船の排水ポンプを陸上の生活排水管に接続し、市政管理システムで無害化処理を行った。宜昌市交通運輸スマートセンターのロビーに設置されたモニターには、汚染物の処理先がリアルタイムで表示され、監督管理部門はいつでも追跡できる。

「生活排水は埠頭が受注し中継運送で運ばれ、直接市政管理システムに排出される。生活ごみは環境衛生部門が受注し、ごみ収集車で固体廃棄物処理センターに運ばれる。含油廃水は埠頭で前処理した後、タンクローリーで製油所に運ばれる」。宜昌市交通運輸スマートセンターの責任者の李憲(Li Xian)さんは、「浄小宜」を通じて、通過船、回収船舶、中継運送車両、端末処理部門の4つの主体の連動が可能になり、電子連続伝票制によって監督管理部門間の情報障壁を打破し、汚染物の「回収、中継運送、処理」の全工程でクローズドループ管理を行えると説明した。

 李さんによると、2019年11月の「浄小宜」の導入以来、2021年4月27日までに長江の宜昌区間では汚染物の累計回収量が11万1885件となり、合計で生活ごみ2002.7トン、生活排水8万1747.5立方メートル、含油廃水5408.3立方メートルを回収した。

 現在、宜昌市の船舶生活ごみと生活排水の回収や、中継運送、処理は全面無料となっているという。(c)People’s Daily/AFPBB News