【6月4日 AFP】ミャンマーの民主派勢力でつくる「国家統一政府(NUG)」は3日、同国で迫害されているイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)に対し、軍事政権打倒への協力を求め、政権奪回後の市民権付与とミャンマーへの帰還を約束した。

 ミャンマーでは、2月1日の国軍クーデターで、アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問と国民民主連盟(NLD)政権が倒れて以来混乱が続き、反体制派に対する弾圧で800人以上が死亡している。

 政権から追い出されたNLDの議員らは、反クーデター派をまとめてNUGを発足させた。軍事政権はNUGを「テロ組織」に指定しており、ジャーナリストを含めNUGに接触した人物は、テロ対策法に基づいて起訴される恐れがある。

 スー・チー氏のNLD政権は、ミャンマーの多数派である仏教徒を刺激しないよう「ロヒンギャ」という言葉の使用を避け、「ラカイン(Rakhine)州に住むイスラム教徒」と呼んでいた。だが、NUGの今回の声明は、「ロヒンギャの人々に、われわれや他の人々と協力し、軍事独裁政権に対抗する『春の革命』に参加するよう呼び掛ける」と述べている。

 ミャンマーでロヒンギャは、バングラデシュからの侵入者とみなされ、市民権や行政サービスへのアクセス権などを何十年間も否定されてきた。その状況を、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は、アパルトヘイトさながらと形容している。

 NUGは同じ声明で、ロヒンギャを差別する1982年の国籍法の廃止も約束。ミャンマー生まれ、あるいはミャンマー人との間に生まれた全員に市民権を与えるとしている。

 また、バングラデシュの難民キャンプにいるロヒンギャ全員が「自発的かつ安全に、尊厳を持って帰還できるようになり次第」、ミャンマーへの帰還を実現するとしている。

 国連(UN)が民族浄化だと非難した2017年の軍事作戦以後、74万人以上のロヒンギャが国境を越えてバングラデシュに避難した。

 一方、今でもラカイン州に残っている60万人以上のロヒンギャは市民権を持たず、行動範囲はキャンプや村の中に制限され、多くが医療を受けられずにいる。(c)AFP