【6月13日 AFP】かつて英国の街角でおなじみだった牛乳配達用の電気自動車。エラ・ショーン(Ella Shone)さん(32)は昨年、その中古車を1台買い求め、新商売を始めた。食料品や生活雑貨を積んで首都ロンドンを回る移動販売で、プラスチック包装は一切使わない。

「ミルクフロート」の愛称で知られるこの車は、玄関先に瓶入り牛乳を届ける配達員によって数十年前まで広く使われていた。再利用されたトラックを見た客たちは「懐かしがる」とショーンさんは言う。

 人気上々の移動販売サービスは、名付けて「トップアップ(継ぎ足し満タン)トラック(TOPUP TRUCK)」。

 客は自分で持参した袋にレンズマメなどの乾物を入れたり、車に積んである大型ディスペンサーから酢や液体洗剤を瓶に入れたりする。新型コロナウイルス流行による1回目のロックダウン(都市封鎖)中に、廃棄物を減らす方法を考えていて浮かんだアイデアだ。
 
 5月の雨の日、ショーンさんはロンドン北東部の新興地区ハックニー(Hackney)で8か所回った。トラックを運転する感じは「とても一本調子で、ちょっとゴーカートのようです」。最高スピードは時速48キロ。「ハンドルが、がたつくこともある」そうだ。

 ある停車場所では3人の客が、乾燥マンゴー、パスタ、レーズンとシャンプーを買った。

 移動店舗はコロナ禍の外出自粛で拡大した宅配需要に乗じ、消費者が玄関先で「包装なしの買い物」をできるようにと始められた。「それをもっと簡単に、アクセスしやすく、見えやすくする必要があると感じていました」とショーンさんは振り返る。

 それでも、すぐには確信が持てなかった。「始めたばかりの頃は、自宅待機で少しおかしくなったかなと自分で思いました」

 ショーンさんはコロナ流行前、持続可能な製造方法を掲げる調味料メーカーで営業の仕事をしていたが、ロックダウン中は政府の賃金補償を受けて休職していた。

 そして「地域に根差したショッピング」を提供するために、ロックダウン中にためた資金を元にトラックを買おうと決めた。配達は昨年8月に開始。客はオンラインでトラックの停車を予約できる。

 彼女の最大の動機はプラスチック包装に対する懸念だ。時間が経過し分解された包装は、あらゆる場所でマイクロプラスチック汚染を引き起こす。

 政府や企業に届く行動が役立つとショーンさんは言う。「消費者レベルで行うべきことがたくさんあるはずです」