■国立公園より規制が緩い保護区域に

 活動家らは、ビヨサ川流域では動植物1175種が確認されていると指摘している。うち119がアルバニアの法律で保護され、39が絶滅の危機にひんしているとされる種だ。

 さらに活動家らは、アルバニアにはこれ以上の水力発電は要らない、他の再生可能エネルギーに注力すべきだと主張している。

 アルバニア政府の関係者らも表向きはこの意見に賛同し、太陽光発電や液化天然ガス(LNG)を利用する計画が進行中だとしている。

 環境省は昨年、トルコとアルバニアの合弁企業によるダム工事の開始を許可しなかった。活動家にとっては大勝利だったが、同社はこの決定をめぐり、裁判を起こしている。

 一方で政府は、国立公園に指定することには難色を示し、規制がもっと緩い「保護区域」にすることを選んだ。

「国立公園にするのは、いささかやり過ぎだ」とエディ・ラマ(Edi Rama)首相はAFPのインタビューで明言。国立公園に指定すれば、数万人の日常生活が制限され、農業やエコツーリズムにも支障が出ると主張した。

 活動家や地元住民は納得していない。

 国立公園に指定されると、川の流域での水力発電事業や空港建設などの開発事業を禁止にできるが、保護区域ではそこまでの措置を講じることはできない。

 エコツーリズムに関する首相の主張も疑問視されている。

「複数のダムが建設され、ここが開発されてしまえば、アルバニアの自然を満喫したいと思っている外国人観光客は、ビヨサだけではなく、他の地域に対しても興味を失ってしまうでしょう」と、観光専門家のアルビオナ・ムチョイマイ(Albiona Mucoimaj)氏は指摘する。

 同氏は、急流でのラフティングや自然が損なわれていない山々でのハイキングを例に挙げた。一方の政府が期待しているのは、団体ツアーによる大勢のインバウンドだ。

 政府は、複数の空港を新設し、アドリア海沿岸でマスツーリズム(観光旅行の大衆化)と経済の活性化をもくろんでいる。そのうちの1空港の建設予定地はビヨサの河口付近の湿地にあり、活動家らによれば、保護区域に位置している。