【6月6日 AFP】パキスタンでは、少数民族ハザラ人(Hazara)の間で武術の人気が広がり、同国南西部の州では女性数百人が、キックやひじ鉄などの技の習得に励んでいる。

 イスラム教シーア派(Shiite)が大部分を占めるハザラ人は、南西部バルチスタン(Balochistan)州の州都クエッタ(Quetta)で、数十年間にわたって宗派間対立による暴力にさらされてきた。2か所のハザラ人居住区は、検問所と武装警備隊によって外部からの侵入を防いでいる。

 その上、女性たちは男性から日常的に受けるセクハラとも闘っている。混雑した市場や公共交通機関で痴漢に遭うこともよくある。

 ナルギス・バトゥール(Nargis Batool)さん(20)は「空手で爆弾を止めることはできませんが、護身術で自信を持つことを学びました」と語る。

「バルチスタン武術・カンフー協会(Balochistan Wushu Kung Fu Association)」の会長イスハク・アリ(Ishaq Ali)氏によると、同州にある25を超えるクラブでは、最多で4000人が定期的に練習している。クエッタ最大の二つの武術学院では、合わせて約500人の生徒の多数が若いハザラ人の女性だという。

 極めて保守的なパキスタン社会では、女性がスポーツをすることは今も珍しく、家族に禁止されることも多い。だが武術を教えるフィダ・フセイン・カズミ(Fida Hussain Kazmi)氏は、例外が生まれつつあると言う。

 2013年の爆破事件で兄を失った学生、サイエダ・クブラ(Syeda Qubra)さん(18)は「ハザラ人社会はたくさんの問題に直面しています。(中略)でも、空手のおかげで安心感が得られつつあります」と語った。

 映像は2月に取材したもの。(c)AFP