【6月28日 AFP】フランス西部の農園では、作物に加えて変わったものを育てている──トマトの苗木にとっての害虫を退治する天敵昆虫だ。これらの昆虫のおかげで、生産者は消費者の嫌がる殺虫剤を使わなくてすむ。

「ここは、マクロロファス(カスミカメムシの一種)と呼ばれる虫を育てるための温室です」と語るのは、ブルターニュ(Brittany)地方の協同組合「サベオル(Saveol)」の会長ピエールイブ・ジェスタン(Pierre-Yves Jestin)氏。手には淡い緑色の昆虫が何匹も止まっている。

 現地で話されるブルトン語で「日の出」を意味するサベオルは仏最大のトマト農協で、年間の生産量は7万4000トンに上る。化学薬品が人間や環境に与える影響への懸念が高まる中、ここ数年「無農薬」を推し進めてきた。

 それを可能にしたのが、1983年に始めた昆虫ファームだ。ブルターニュ半島の先端に位置し、大西洋に突き出したブレスト(Brest)郊外にある広さ4500平方メートルの施設では、トマトにつきものの害虫であるコナジラミやアブラムシを狙うマクロロファスや小さなカリバチを育てている。今年は1200平方メートルの拡張が予定されている。

 ここで育てられる天敵昆虫は毎週、プラスチックの箱に詰められ、サベオルに加盟する126の生産者に送られている。

 サベオルで昆虫プログラムの責任者を務めるロズリーヌ・スリオ(Roselyne Souriau)氏は、「施設の拡張で、より多くのマクロロファスを育てることができる。無農薬トマトの栽培で需要が高まっている」と語る。

■拡大する天敵昆虫の利用

 ブルターニュ産トマトの大部分は温室栽培だ。露地栽培でないため、有機作物とはみなされない。

 そのためサベオルは2年前にブルターニュ地方の他の二つの協同組合と提携し、無農薬トマトのアピールに力を入れ始めた。

 サベオルの加盟農家であるフランソワ・プリカン(Francois Pouliquen)氏は、2020年には薬剤を一切使わなかったと語る。

 同氏は、「消費者は今日、健康な食を求めています」としながら、「もちろん有機の作物はありますが、やりくりしなければならない人には手が届かない場合もあるのです」と続けた。

 使用できる天敵昆虫の種類が増える中、これを導入する農家がフランスでは増えている。仏農業省によると、同国で許可されている農業用の天敵昆虫は、2015年の257種から今年の3月までに330種に増えている。(c)AFP/ Sandra FERRER