【6月2日 Xinhua News】中国湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)の湖南省博物館には、国宝級の貴重な所蔵品「素紗単衣(すしゃたんい)」が保管されている。最も良好な状態で現存する最古の衣服で、最も精巧でセミの羽のように軽く薄い貴重な逸品とされる。

 同省長沙市の東郊外にある馬王堆(Mawangdui)で1972年~74年に行われた発掘調査で、考古学者らが前漢時代の墓葬3基を発見した。墓からは精巧な作りの遺物数千点や保存状態のよい漢代の女性の遺体が出土。中国ひいては世界にとって20世紀最大の考古学的発見の一つとなった。

 素紗単衣は、馬王堆漢墓の1号墓から出土した。史料によると、墓の被葬者は前漢の長沙国で丞相を務めた利蒼(りそう)の妻、辛追(しんつい)。今から2200年以上も前の時代に生きた女性で、50歳くらいで亡くなったとされる。

 素紗単衣は比較的簡単な作りをしており、同墓からは直裾(ちょくきょ、裾が直線状のもの)と曲裾(きょくきょ、裾が曲折した形のもの)が1枚ずつ出土した。いずれも左の衽(おくみ)を右の上に重ねる着方(右衽、うじん)になっている。直裾は1枚の重さが49グラム、衣の長さが128センチ。曲裾の重さは48グラム、衣の長さは160センチ。

 素紗単衣は前漢時代の織物の最高峰で、現存する最も古くて薄く、軽い衣服とされる。同博物館は2019年、中国伝統の手織り工芸品「南京雲錦」を研究する南京雲錦研究所と共同で、2年の歳月をかけて49グラムの素紗単衣の模造品を完成させた。出土から40年余りを経て、政府の認可や博物館の専門家らによる鑑定を受けた、初の再現模造品となっている。

 素紗単衣は2002年に、国外持ち出し禁止の最初の文化財の一つに指定された。(c)Xinhua News/AFPBB News