【6月11日 AFP】バルカン半島の小国モンテネグロ。静かな村の頭上を走る真新しい高速道路が、山腹のトンネルに消えていく。

 ここは、中国からの資金に頼る10億ドル(約1100億円)規模の大工事の起工部だ。この事業のために同国の経済は危機に直面している。

 モンテネグロ政府は中国からの融資のうちすでに9億4400万ドル(約1030億円)を、工事の第1区間である41キロの完成に費やしてしまった。世界で最も高価な舗装道路区間の一つと言える。

 そして残る約130キロを完成するには、少なくとも10億ユーロ(約1330億円)が必要とみられている。

 中国人労働者たちが6年がかりで硬い岩盤にトンネルを掘り、山間部や峡谷にそびえ立つコンクリートの橋脚を建ててきたが、道路は文字通り行き先が見えない。

「立派なものが建ったが、ここで終わるわけにはいかないでしょう」と語るのは、マテセボ(Matesevo)村で引退生活を送るドラガンさん(67)。「まるで高級車を買って、車庫に入れっぱなしにしているみたいです」

 未完成の区間の資金調達、建設による環境破壊、発注絡みの汚職疑惑といった問題が指摘されているが、地元住民は工事の恩恵を強調する。

「土地が売れて、出て行った人もいます」と匿名で取材に応じた村民が語る。自宅脇には片側2車線の高速道路を支える巨大な橋脚が出来上がっている。「野菜やニワトリが作業員に売れました」。工事現場から出た土砂の山によって、川の氾濫も止まったと言う。