【5月28日 AFP】テクノロジー界の億万長者、イーロン・マスク(Elon Musk)氏率いる宇宙開発企業スペースX(SpaceX)が地球上空の低軌道に数千もの衛星を打ち上げることは、宇宙の「事実上の独占」となる恐れがあると、競合する欧州宇宙産業大手アリアンスペース(Arianespace)のステファン・イズラエル(Stephane Israel)最高経営責任者(CEO)が警告した。

 多数の小型衛星を宇宙に展開してブロードバンドインターネットサービスを提供しようとするマスク氏の「スターリンク(Starlink)」計画は、宇宙からのブロードバンド提供について先ごろ米連邦通信委員会(FCC)の認可を受けた。世界のインターネット接続が普及していない地域や孤立した地域を、約2800基の衛星でカバーするのが目的。

 しかし、スターリンク計画の衛星の位置は当初案よりも低軌道となる見込みで、米インターネット通販大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)など競合他社は、衛星同士の衝突や電波干渉のリスクが高まると主張している。

 持続可能な宇宙開発目標に関する国連(UN)会議に出席したイズラエル氏は、「われわれは人類の活動にとって、宇宙が利用可能であり続けてほしいと願っている。(中略)しかし、宇宙のワイルドウエスト(開拓時代の米西部)化は拒否する。低地球軌道(高度1000キロ以下)を長期的に持続可能とすることは真にわれわれの責任だ」と述べた。

 また、1957年以降に地球軌道に投入された人工衛星は9000個以上あると述べた上で、「スペースXはスターリンク計画のためにすでに1677個を展開している。つまり、きょう運用されている全人工衛星のうち、35%が一人の男性(マスク氏)のものだということだ」と指摘した。

 イズラエル氏、近年は衝突が何件か発生しており、うち少なくとも2件はスターリンク関連だとも指摘。「非常に早い段階で、この軌道が利用不可能となる壊滅的なシナリオに陥る可能性がある 」と警告した。

 さらに、スペースXがこうした衛星ネットワークを構築した最初の企業の一つとして「事実上独占するリスク」があるとも懸念し、同社はFCCの認可を得たことで「むしろそれを狙っているのではないか」と述べた。(c)AFP