【6月7日 AFP】金曜日の夜遅く、米ニューヨーク・マンハッタン(Manhattan)の暗い路地をうろつく8人の男女と犬たちの影──彼らには、たった一つのミッションがある。できるだけ多くのネズミを狩る、というものだ。

 犬が息も荒くリードを引っ張りながら、ごみ捨て場に飛び込む。数秒後、戻ってきたときには身もだえするネズミをくわえている。

「この子たちは、この任務のために育てられた。任務に興奮し、任務を楽しみにしている」と、リチャード・レイノルズ(Richard Reynolds)さん(77)は語る。約30年の実績を持つネズミ駆除集団「ライダーズアレー・トレンチャーフェッド・ソサエティー(Ryders Alley Trencher-fed Society)」、略して「R.A.T.S.」(ネズミ)の創設者だ。

 ニューヨークのネズミは、悪名が高い。人口800万人余りの市内には、人間と同数のネズミが生息しているともいわれる。

 R.A.T.S.のボランティアと犬たちは、新型コロナウイルスの流行下でも、やや不定期ながら夜間の任務を継続してきた。

 チームの中核はテリア種の犬だ。ジャーマンハンティングテリアなど脚の短い犬種が、ごみや建築廃材の山、植え込みの中に隠れたネズミを追い出す。その間、ベドリントンテリアなど長い脚で速く走れる犬種は、いつでも飛び掛かれる体勢で後ろに控えている。

「ちょっとX-MENっぽいでしょう」と、ドッグトレーナーのアレックス・ミドルトン(Alex Middleton)さん(36)は米人気コミック・映画シリーズのタイトルを口にした。「それぞれの犬が、それぞれのスーパーパワーを持っているんだ」

 レイノルズさんが自ら金属の棒でごみ箱をたたいてネズミを追い立てることもある。ミドルトンさんの合図でジャーマンハンティングテリアのロンメル(Rommel)がごみの山に突っ込んでいくと、メンバーたちは「それいけ、やっつけろ!」と声援を送る。

 犬たちが捕まえたネズミは袋に詰められ、その夜の任務の終わりに一匹ずつ数えられる。ネズミの死骸は冷凍して近くの野鳥リハビリセンターに餌として寄贈したり、DNAサンプルを大学の研究室に送ったりしている。