■人類が将来どうあるべきなのかという地球規模の問い

 ビヨサ川をめぐる攻防戦は、人類が将来どうあるべきなのかという地球規模の問いを端的に表している。いかなる犠牲を払ってでも開発は進めるべきなのか、それとも、何よりもまず環境保護を優先するべきなのか。同様の議論が、中国からチリまで世界中で起きている。

 ビヨサ問題は「欧州はもちろん、世界に前例をつくるまたとない機会だ」と、保護活動NGO「ユーロネイチュア(EuroNatur)」のアネット・スパンジェンバーグ(Annette Spangenberg)氏は言う。自然のままのビヨサ水系を維持することで、「自然保護の可能性について新たな基準」を設定できると主張する。

 しかし、ダム建設に反対する闘いの中心には、村民の日々の暮らしの維持と向上がある。

「ビヨサは私たち、そして私たちの土地や食料にとって不可欠だ。生活と切っても切れない」と地元住民のイダエット・ゾータイ(Idajet Zotaj)さん(60)は語る。

 メジン・ザイミ・ゾータイ(Mezin Zaim Zotaj)さん(86)の7人の子どもは皆、この地域を離れた。「ビヨサが国立公園になれば、子どもたちは全員ここに戻り、故郷で未来を築くはずだ」と、川べりで羊の群れの世話をしながら話した。(c)AFP/Briseida MEMA and Joseph BOYLE