【5月30日 東方新報】中国の自動車業界団体「全国乗用車市場信息聯席会(CPCA)」の発表によれば、米国の電気自動車メーカー、テスラ(Tesla)が中国で4月の卸売り台数は2万5845台で、3月と比べて約1万台も減少した。一方、中国の電気自動車メーカーの三強といわれる「上海蔚来汽車(NIO)」「理想汽車(Li Auto)」「小鵬汽車」(XPeng)は4月、軒並み販売台数を増やしている。中国の電気自動車市場が成長する中、テスラ一社だけが失速した形だ。

 テスラが中国の消費者に敬遠されるようになった理由は複数あり、そのうち、最も注目されたのは、4月の上海モーターショーで起きたトラブルだった。内覧会初日の同19日、一人の若い女性が、テスラの展示車のボンネットとルーフによじ登り、「テスラ車のブレーキは故障する」などと大きな声で抗議し、現場は一時混乱した。

 女性は約2分後、警備員に取り押さえられた。後にこの女性が中国メディアに語ったところによれば、女性の父親は今年2月、河南省(Henan)の自宅近くで、テスラ車を運転していたところ、突然ブレーキが利かなくなり、立て続け2台の車に追突し、最後は道路際のコンクリートの柵に衝突してようやく車が止まった。女性の父親と助手席にいた母親がけがした。事故後、女性はテスラ社に対し賠償と事故車両の回収を要求したが、テスラ社側は「事故原因はスピード違反」と主張し、賠償などを拒否したという。

 上海モーターショー(Auto Shanghai 2021)での騒ぎは中国メディアに大きく報じられ、その動画はソーシャルメディアでも拡散された。テスラ社は女性とのやり取りで運転手側の過失ばかり強調し自らの責任を全く認めなかったため「態度が冷たい」「傲慢(ごうまん)だ」といった批判が多く寄せられた。ほぼ同じ時期、「テスラ車に搭載されたカメラが潜在的な安全保障上のリスクがある」とも報道された。これを受け、複数の中国の政府機関と軍事施設はテスラ車の立ち入りを禁止したという。

 2018年に中国に進出したテスラはこれまで、中国での販売は好調だったが、苦情対応の不十分さは以前から指摘されていた。中国の規制当局や同業他社との交流にも消極的で、テスラ社の関係者は中国当局が主催する自動車に関するシンポジウムや会合などを欠席することが多かったという。

 今回の販売台数の減少は、市場の急拡大に見合うサービス態勢を整えなかったことや、米国企業文化を中国に持ち込み、現地へ適応する努力が足りなかった結果ともいえる。テスラ側は最近、中国の規制当局との関係強化や政府関係担当チームを増員するなど、イメージ回復に躍起になっているという。(c)東方新報/AFPBB News