【5月29日 東方新報】中国・雲南省(Yunnan)昆明市(Kunming)で10月に開催される第15回生物多様性条約締約国会議(COP15)に向けて、中国で生物多様性保護への関心が高まっている。中国が環境保護に力を入れていることを世界にアピールし、COP15で決定する新世界目標に中国政府の方針を反映させたい思惑もある。

 昆明市では16日、写真家でチベット生物多様性保全研究所創設者の羅浩(Luo Hao)氏が「COP15に向けて 世界の峰-チベット(Tibet)・ヒマラヤ(Himalaya)生物多様性ハンドブック」を出版した記念シンポジウムが開かれた。ヒマラヤ山脈北部の海抜1000メートルから6200メートルまでの希少な動植物455種を収録した初の体系的なリポート。北京大学(Peking University)生命科学部の馮利民(Feng Limin)准教授や中国科学院昆明植物研究所の牛楊(Niu Yang)准研究員など各分野の専門家が監修した「国家プロジェクト」といえる。シンポジウムでは「この本は、エベレスト地域の重要な資料となるだけでなく、市民の自然環境への愛着や保護意識を呼び起こす」と意義が語られた。

 浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)の湿地における野生動植物の保護活動、絶滅の恐れがある海南島(Hainan)のテナガザルの繁殖と熱帯雨林の保護、長江三峡ダムのシダ類など希少植物の保護…。中国では現在、各地の生物多様性保護の取り組みが多く取り上げられている。

 COP15が開かれる雲南省は、熱帯の谷間から寒帯の高山まで地形が豊富で、希少な生態系を擁している。生物多様性を語る、うってつけの「自然のステージ」だ。そしてCOP15の最大のテーマは、2010年に名古屋市で開かれた第10回締約国会議(COP10)で定めた現在の世界目標「愛知目標」の改定だ。淡水・海洋・陸上の生態系の維持・再生、海洋汚染プラスチック対策、外来種のコントロール等が対象となる。各国とも生態系を保全しながら自国産業を優位にしたい思惑があり、環境を考える会議であると同時に国家間が駆け引きをする一種の経済会議でもある。中国にとっては自国の環境政策「生態文明」を国際社会にアピールし、海外の開発プロジェクト進出につなげたい狙いがある。

 ただ、COP10の「愛知目標」は「自然生息地の損失を半減し、ゼロに近づける」など、2020年までに達成すべき20の個別目標を掲げたが、ほとんどが達成されていないのが実情。COP15での新目標が「絵に描いた餅」に終わらぬよう、ホスト国・中国のかじ取りが注目される。(c)東方新報/AFPBB News