【5月25日 AFP】香港は、接種ペースが伸び悩み、使用期限が迫っていることから、新型コロナウイルスワクチン数百万回分を間もなく廃棄せざるを得なくなる恐れがある。当局者が25日、明らかにした。

 約750万人が暮らす香港は、人口を上回る量のワクチンを確保した世界でも数少ない地域の一つだ。

 しかし、反体制派を排除する香港政府に対する根強い不信感や、インターネット上の誤情報、新型ウイルスの感染封じ込めに比較的成功していたことによる危機感の欠如などが原因で、ワクチン接種への抵抗感が高まり、接種事業は滞っていた。

 香港政府のワクチン対策本部メンバーで衛生防護センター(Centre for Health Protection)所長を務めたこともあるトーマス・ツァン(Thomas Tsang)氏は24日、香港に届いた米製薬大手ファイザー(Pfizer)と独製薬ベンチャーのビオンテック(BioNTech)が共同開発したワクチンの第1便が、間もなく使用期限切れになると警告した。

 ツァン氏は香港電台(RTHK)のラジオ番組で、「現在の計画では、ファイザー・ビオンテック製ワクチンの地域接種会場は、9月いっぱいで閉鎖される」とも明らかにした。「全世界がワクチンを求めて奔走しているのに、買ったワクチンを使わないのは完全に間違っている。おそらく今年の分は、今あるものだけだ」

 香港は、ファイザー・ビオンテック製と中国のシノバック・バイオテック(Sinovac Biotech)製のワクチンをそれぞれ750万回分購入した。

 世界保健機関(WHO)はシノバックのワクチンをまだ承認していないが、香港の規制当局は迅速に承認した。

 これまでに少なくとも1回のワクチン接種を受けたのは全人口の19%、2回の接種を終えたのは14%にとどまっている。

 香港では、ワクチン接種に消極的な医療従事者も珍しくない。香港病院管理局は今月、接種を受けた職員が3分の1にとどまると発表した。

 香港にはファイザー・ビオンテック製ワクチン326万3000回分が届いたが、123万1600回分しか使われていない。(c)AFP