【5月24日 AFP】米ルイジアナ州で2年前に警察との高速カーチェイスの末に事故を起こして負傷し死亡したとされていた黒人男性が、警官にテーザー銃で複数回撃たれ、引きずられ、首を絞められ、殴られている様子を捉えた動画がこのほど初めて公開された。当局発表を覆す映像に、波紋が広がっている。

 警察は、理容師のロナルド・グリーン(Ronald Greene)さん(当時49)が死亡した経緯について、2019年5月10日にルイジアナ州北部で交通違反の車を停車させようとした際、カーチェイスになったと発表していた。交通違反の詳細は公表されていない。

 遺族によると警察は当初、グリーンさんは運転する車が木に激突した衝撃で死亡したと説明した。だが、後日まとめられた捜査報告書には、グリーンさんには事故の後も息があり、逮捕しようとした州警官らに抵抗した後、病院へ搬送中に死亡したと記されていた。

 その後、ルイジアナ州警察は逮捕中に実力行使をしたと認めたが、正当な対応だったと主張していた。

 だが、このほど米AP通信(Associated Press)が警官のボディーカメラと車載カメラで撮影された映像を入手・公開。その後、州当局も別の動画を公開し、当初の発表とは全く異なる状況が明らかになった。

 AP通信によると、同社が入手した動画には、警官らがグリーンさんの車のドアを開け、「ごめんなさい」と叫ぶグリーンさんにスタンガンを使用する様子が映っている。グリーンさんは「怖い」とも叫んでいた。警官は全員、白人だった。

 その後、警官1人がグリーンさんを地面に組み伏せ、首に絞め技をかけ、顔を殴っていた。別の警官がグリーンさんの足首を手錠で拘束して引きずる様子や、手錠を掛けられて地面に横たわったグリーンさんが再度テーザー銃で撃たれる様子も映っていた。

 警官らは、顔を伏せた状態でうめくグリーンさんを9分以上にわたり放置し、手に付着した血をふくなどしていた。動画からは、グリーンさんの皮膚に複数のテーザー銃の電極が刺さっていることが確認できる。

 遺族は2020年5月、グリーンさんは警官の暴行により「流血し、心停止に至った」として不法死亡訴訟を起こした。訴状によると、グリーンさんの車の前面には衝突の痕跡はなく、エアバッグも作動していなかったという。

 AP通信によれば、遺族が訴えた警官3人のうち、1人は停職処分を受けたが既に職務に復帰し、別の1人はこの一件に絡んで解雇を通達された数時間後に交通事故で死亡し、最後の1人は今年2月に別件の過剰な力の行使に関与した疑いで逮捕されたという。(c)AFP/Brian KNOWLTON