【5月25日 東方新報】「このお菓子は辛くてイケる。こちらはどうかな」——北京市に住む趙靈(Zhao Ling、42)さんが車いすに座りながら、カメラの前でスナックや軽食の食べ比べを始めた。

 先天性脊髄損傷で下半身不随の趙さんは、中国で流行しているインターネットのライブ販売に挑戦している。カニ風味のおこげスナックや紫芋パン、スパイシーなフライドポテトなど、いろいろな食べ物を味わいながら紹介し、視聴者が購入すれば趙さんも収入が得られる仕組みだ。3時間半にわたる生中継では途中に上半身の力で「車いすダンス」を披露し、視聴者から「すごい」と反響があった。

 北京市の文化・芸術系企業が障害者向けのライブ販売を提案し、趙さんも参加した。同社を経営する呉衛豊(Wu Weifeng)さんは「移動や時間の制約が少ないライブ販売は障害者の新たな仕事になる。不幸を売り物にするのでなく、自分の力で商品を売ることは生きる自信にもつながる」と話す。

 中国障害者連合会によると、国内の障害者は2020年2月現在で8500万人に上り、総人口の約6.2%を占める。中国では1982年の憲法(現行法)で初めて障害者に言及し、その後の障害者保障法や障害者就業条例で国が就労支援することを明記。企業の法定雇用率も1.5%以上と定めている。だが、8500万人のうち雇用されている障害者は10.1%の861万人にとどまるのが現状だ。

 北京市では2019年で就労年齢の障害者が18万3000人。そのうち71.6%の13万1000人が雇用されている。人口の多い都市ほど就労率は高く、中小都市や農村部では低くなる地域格差が顕著となっている。

 障害者向けの職業訓練学校での教育や企業の集団採用促進などの政策は長年続けられているが、やはり大都市中心にならざるを得ない。そんな中、インターネットを通じたビジネスは新しい就業の受け皿となり、障害者と健常者の触れ合いが広がる効果が期待されている。各地の障害者団体や関連企業が取り組みを進めている。今後、「網紅」と呼ばれる障害者のインフルエンサーが誕生するかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News