【5月24日 People’s Daily】一晩中小雨が降り、朝食後にやっとやんだ。陳遠福(Chen Yuanfu)、陳遠洋(Chen Yuanyang)兄弟は急いで設備を取り出して忙しく働き始める。集落はロケ地で、家族が順番に主役になり、ストーリーはすべて村の面白い出来事だ。

 昨年から、長年出稼ぎをしていた陳兄弟は、故郷に帰ってショートビデオの制作を始めた。少し前では考えられないことだった。

 中国貴州省(Guizhou)畢節市(Bijie)百里杜鵑管理区ガムコミュニティーの卜塘組は、烏蒙山の奥地に位置している。そこは陳兄弟の家がある。山が高く、林がうっそうとしてるため、外部との情報のやりとりに不便だった。「フィッシュボーンアンテナを空に向かって立てても、テレビは1つのチャンネルしかつかなかった。まして電話など言うまでもない」。兄は小学校の時、野生の果物を誤って食べて中毒になったことがあり、村人たちは彼を背負って数十キロの山道を走ってやっと病院に連れて行くことができた。

 中学を卒業する前に、陳兄弟は相次いで他の省へ出稼ぎに行った。「家族に連絡するには、町の知り合いと電話する時間を先に決めないといけない。両親が町の市場に行くときに、ついでに電話に出てもらうようにしていた」。2008年、兄は約2か月の給料をかけて、人生初の携帯電話を購入した。正月に帰省する際に自慢しようと思ったら、携帯電話は通話不能な「れんが」になっていた。

 過去数年、陳兄弟はショートビデオの撮り方を習得した。故郷に帰るたび、いつも故郷の様子をネットに投稿したいと思っていたが、携帯電話の電波が弱くて、全然発信できなかった。

 貴州省は2019年、第5陣電信のサービス普及試行建設の実施を開始し、畢節市など5つの市・州に3513の4G基地局を新設し、遠隔山間部に「通信ネットワーク」を構築する予定を立てた。卜塘組の62世帯280人余りの民衆の苦境は、ようやく転機を迎えた。

「電波が周辺の多くの人のところに届くように、最終的に山頂に基地局を設置することにした」。技術者が念入りに視察した結果、陳兄弟の家の後ろの高さ約300メートルの山に基地局を設置することになった。3か月以上の苦闘の末、2019年末にはようやく4G基地局が完成した。

 安定したネット電波を得て、村人たちは続々と家にブロードバンドを設置し、卜塘組ではスマホやネットテレビの購入ブームが巻き起こった。昔は静かだった小さな集落が急速ににぎやかになった。兄は思い切って弟を連れて村に残って自主起業し、わずか1年余りで300本以上の動画作品を作り、数十万人のファンを集めた。1本の作品の再生回数は最大700万回を超えた。

「次第に有名になってから、県城の企業や商店から広告の撮影を頼まれた。他郷への出稼ぎよりよいお金になった」。陳兄弟は今では地元の「ネットスター」になったが、それでも満足していない。彼らは農村のEC業界にも進出しようと思っている。実家では売れないお土産をネット通販のプラットフォームに載せ、村人たちを先導して共に富を得る計画だ。

 貴州省の辺ぴな山岳地帯では、ネットワークの翼を立てるのは卜塘組だけではない。「第13次5か年計画」期間中、同省は国家電信の普遍的なサービスの試行建設の実施に5回参加し、延べ8900の行政村で光ファイバーの建設と改造を完了させ、5047の4G基地局を新設した。同省は2020年末、全省の30世帯以上の村の4Gネットワークをほぼフルカバーした。(c)People’s Daily/AFPBB News