■企業のマスト

 専門家の中には、このような取り組みが本格的な改革につながることに懐疑的な見方を示す人もいる。

 英リーズ大学デザイン学科(University of Leeds School of Design)で持続可能性について教えるマーク・サムナー(Mark Sumner)氏は、「いくつかの取り組みはこの業界で需要を見いだせるかもしれないが、新たなアプローチが越えなければならないハードルは高い」と指摘する。

 サムナー氏は、既存のシステムを置き換えることよりも、改善することで最大の効果が期待できると考えている。「責任のあるブランドや小売業者らにとって持続可能性とは、もう一過性のブームではなく、ビジネスに必要不可欠なエレメントと考えられています」

■素材の追跡

 透明性の確保を優先課題と見る向きは強い。

 ファッション産業のあり方を問い直す国際活動団体「ファッション・レボルーション(Fashion Revolution)」のデルフィーヌ・ウィリオット(Delphine Williot)氏は、サプライチェーンがあまりにも複雑化していることから、「多くの企業は自社の衣料がどこで作られているのか、生地がどこで生産されているのか、原材料の供給者が誰なのかを知りません」と指摘する。

 こうした状況を改善すべく、新しいアイデアを提示したのは衣料のトレーサビリティー(追跡可能性)を手掛ける「ファイバートレース(Fibretrace)」だ。同社は、ファッション小売業の業界誌「ドレーパーズ(Drapers)」で、今年のサステナビリティ賞に選ばれた。

 ファイバートレースの技術では、除去不可能な生物発光性の顔料を糸に付着させる。この糸が使われた衣料では、バーコードのスキャンと同じ要領で原産地などを知ることができるのだ。

 ファイバートレースのアンドルー・オラー(Andrew Olah)氏は、「衣服がどこで作られたかが分からなければ、環境への影響を知ることはできません」と語る。

 また、「サプライチェーンを公開しないのは、何かを隠しているか、愚かであるかのどちらかです」としながら、「やらなければならないことは多いですが(中略)私はとても楽観しています」と続けた。(c)AFP/Eric RANDOLPH