【5月26日 AFP】フランス中部ボルヴィック(Volvic)を囲む緑豊かな火山性丘陵は長らく、世界的に有名なミネラルウオーターの水源地となってきた。しかし、地元住民や地質学者は、過剰な採水により、地域一帯が危険にさらされていると警鐘を鳴らしている。

「かつては水が膝の高さまであり、水車2基を回していた」。ボルヴィック近郊の村の生家前の流れを指さしながら、ピエール・グロドクール(Pierre Grodecoeur)さん(69)はこう話す。水車はなくなり、最近では川が干上がっていることも多いという。

 オーベルニュ(Auvergne)地域圏に位置するグロドクールさんの村のすぐ近くには、仏食品・飲料大手ダノン(Danone)が所有するミネラルウオーター「ボルヴィック」の巨大なボトリング工場がある。

 仏政府は2014年以降、ダノンに年間280万立方メートル、1リットルボトルで換算すると28億本分の採水を許可している。これは、毎秒89リットル近くの水をくみ出していることになる。

 工場近くの養魚場にはボルヴィックの源泉が湧き出ているが、いまでは数か月間、全く水が出ないこともある。

 地質学者のロベール・デュラン(Robert Durand)氏はAFPに対し、ボルヴィックの源泉の平均流量は、1927年の毎秒470リットルから毎秒50リットルまで落ち込んだと語った。

 水不足により木々に覆われた丘陵の湿度が下がっており、地域の生物多様性に影響が出ている。

 オーベルニュ地域圏クレルモンフェラン(Clermont-Ferrand)にあるフランス国立科学研究センター(CNRS)の専門家、クリスティアン・アンブラール(Christian Amblard)氏は、「砂漠化の始まりと言える」と指摘する。

 農業を営む男性は、ボルヴィック周辺の水は不足しており、もはやかんがいには使えないと話す。「この辺りではここ数年、植物や野菜が全く育たない」

 ダノンのボトリング工場長のジェローム・グロ(Jerome Gros)氏は、工場が水をくみ尽くして干上がらせているとの批判に対し、ダノンは水源の保護に多額の投資をしていると反論した。

 一方、専門家らは、ボルヴィックの工場は地下100メートルから水をくみ上げていると指摘。ここ数年の降雨量は安定しており、水源の枯渇は天候のせいではないとしている。

 地元環境保護グループに所属する地質学者は「バスタブの底から水をくみ上げて空にしているようなものだ」と批判した。(c)AFP/Celine CASTELLA