【5月21日 AFP】北極圏の温暖化は地球平均の3倍の速さで進行しており、そのペースはこれまで考えられていたよりも速いとする報告書が20日、発表された。

 この報告書は北極圏監視評価プログラム作業部会(Arctic Monitoring and Assessment ProgrammeAMAP)によるもので、アイスランドのレイキャビクで今週行われた、北極圏の国が集まる北極評議会(Arctic CouncilAC)の閣僚会合に合わせて発表された。

 1971~2019年の半世紀に満たない間に、北極圏の年平均気温は3.1度上昇。一方、地球全体では1度上昇した。

 これは、従来の推定を上回る速さだ。国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2019年に発表した雪氷圏(地球の凍結部分)に関する報告書では、北極圏の地表気温の上昇は「地球平均の2倍以上」と推定していた。

 AMAPの報告書によると、転換期は2004年。この年、北極圏の気温が大幅に上昇したが、その理由はほぼ説明がつかないという。以降、温暖化はそれ以前の数十年間と比べて、3割増しのスピードで進行し続けている。

 温暖化が今後すぐに止まることはない。報告書は、北極圏の平均気温は今世紀末までに、1985~2014年の平均を3.3~10度上回ると予想している。

 最終的な値は、人類がどれだけ迅速に温室効果ガス排出量を削減するかにかかっている。

 温暖化は北極圏の生態系に直接的な影響をもたらす。それには、ホッキョクグマをはじめとする動物の生息地や食性、また動物間の関係性などにおけるさまざまな変化が含まれる。一部の種の移動もある。

■世界への影響

 北極地域に暮らす400万人、とりわけ先住民も多大な影響を受ける。

 気候評価と政策に関するアラスカ・センター(Alaska Center for Climate Assessment and Policy)のサラ・トレイナー(Sarah Trainor)代表は、「グリーンランド北西部の猟師らは、氷海を犬ぞりで移動できる期間が5か月から3か月に減ったと報告している」と語る。

 カナダやロシアの先住民の猟師や漁師の報告によると、アザラシがやせ、野生動物の健康が悪化し、魚や海洋哺乳類に寄生虫がまん延していると同代表は指摘している。(c)AFP/ Pierre-Henry DESHAYES