【5月27日 AFP】西アフリカ、コートジボワールの農村部で警察に保護されたイスフさん(15)は、民生委員と会って20分後、諦めたように認めた。カカオ農園で働いていたことを。

 世界トップのカカオ豆生産地であるコートジボワールでは、学業を捨てて農家に安い労働力を提供する若者が大勢いる。やせこけたイスフさんはその一人だ。

 警察は5月上旬、カカオ生産の中心地スブレ(Soubre)で児童労働の一斉摘発を行い、イスフさんを含む68人の子どもを保護した。コートジボワールの最大都市アビジャン(Abidjan)から西へ400キロの地帯だ。

 この大々的な作戦のきっかけになったのは、「エシカル(倫理的)」なチョコレートを求める欧米諸国の消費者による圧力の高まりだ。環境に優しく、児童労働とは無縁の製品が要求されている。

 米シカゴ大学(University of Chicago)・全国世論調査センター(NORC)によると、2018~19年にコートジボワールでカカオ関連の労働に関わった子どもは80万人近く。米テュレーン大学(Tulane University)の2013~14年の推計では約120万人だった。

 この子どもたちの多くは内陸の貧困国であり、労働力の供給源でもある隣国ブルキナファソやマリの出身だ。

 イスフさんは2年前、ブルキナファソから父親に連れて来られたという。農園で働くため、叔父と称する男に預けられた。

 女性・家族・児童省のアラン・ディディエ・ラスメル(Alain-Didier Lath Mel)児童保護局長は「これは人身売買の一例です」と断定する。

■職業訓練

 児童労働摘発作戦は2009年から5度目で、2日間にわたり治安部隊や警察、準軍事組織の憲兵隊から約100人が参加したと発表された。

 スブレから50キロ離れたメアギ(Meagui)地区での出動には、報道陣も同行することができた。

 四輪駆動車数台が連なった摘発隊は、バイクに先導され、カカオ畑やゴムの林の間を抜けて進んだ。畑から戻る途中の子どもや、家の前に干されたカカオ豆の山の番をしている子どもたちと遭遇。農園内にいた子どもたちを探し出し、逃げた子どもも保護した。

 4時間の出動で十数人が集められ、3年前スブレに開設された児童施設に移された。ここで未成年の労働者らは、民生委員や心理学者から聞き取りと説得を受けた。警察や施設の担当者と相談の上、親が翌日引き取りに来る手はずとなった。

 深刻な強制労働や児童虐待の場合は、同施設に数か月間滞在する。多くの子どもは読み書きができないが、学校に戻って畜産や市場向けの野菜栽培、縫製、理髪、鉄工などの仕事を覚えることもできる。

 警察は摘発を行うだけで、通常のケアは地域の児童保護委員会が行っている。