【5月20日 People’s Daily】「触っただけで支払いが済むからとても便利だ」と、今年60歳の男性の劉さんは、先日海南省(Hainan)博鰲(Boao)に旅行に行く際に、ちょうどデジタル人民元体験活動に居合わせた。劉さんの手にはデジタル人民元支払いに対応できる腕時計が装着され、店で買い物をする際に腕時計でPOS端末に触れるだけで支払いは成功した。「この『財布』は使いやすい」と、劉さんは手首のスマートウォッチを指差し、嬉しい驚きに満たされながら語った。彼はこの新しい支払い方法が早く普及することを望んでいた。

 上海のある青果商のおかみの陳さんも、デジタル人民元の便利さに感銘を受けた。「店の毎日の売り上げが自動的に銀行口座に振り込まれ、デジタル人民元で供給業者や家族にリアルタイムで送金する。手数料もかからなくて、とても得だ」と、彼女は述べた。

 デジタル人民元は、本質的には、国家の信用によって保証され、中国人民銀行が発行する法定通貨で、デジタル化された現金で、紙幣・硬貨と完全に等価のものだ。2019年末、デジタル人民元は相次いで深セン(Shenzhen)や、蘇州(Suzhou)、雄安新区(Xiong’an New Area)、成都(Chengdu)、そして今後の冬季オリンピックのシーンで試行テストを開始し、2020年10月までに上海、海南(Hainan)、長沙(Changsha)、西安(Xi’an)、青島(Qingdao)、大連(Dalian)の6つの試行テスト地区を追加し、範囲を順次拡大させている。

 専門家によると、デジタル人民元が広く注目されるのは、便利で速いという特徴だ。支払人と受取人しかいないため、この支払い方法はリアルタイムで入金が可能だ。オフラインでも、現金と同じように支払うことができる。さらに重要なことは、業者や第三者のプラットフォームが消費者の個人情報や支払いデータにアクセスすることができない制御可能な匿名性のおかげで、よりプライバシーの安全性が高いことだ。

 中国人民銀行(People's Bank of China、中央銀行)デジタル通貨研究所の穆長春(Mu Changchun)所長によると、制御可能な匿名性はデジタル人民元の重要な特徴で、公衆の合理的な匿名取引と個人情報のセキュリティーにとって有益なだけでなく、マネーロンダリング、テロ資金調達、脱税などの違法・犯罪行為の防止と取り締まりに役立ち、金融の安全も守れるという。

 試行都市では、複数の銀行が深く関与することにより、デジタル人民元はすでに飲食サービスや、水道光熱費などの支払い、ショッピング、交通移動などの各使用シーンをカバーしている。専門家は、デジタル人民元は今後、eコマースや、ショートビデオなどのオンライン分野に浸透し、かつ企業間の取引や、サプライチェーンファイナンスなどの実体経済分野でも活躍すると予想している。

「デジタル経済時代において、デジタル通貨は経済運営の効率を向上させ、新たな経済業態や経済モデルを生み出す大きな潜在力を秘めている」と、商務部国際貿易経済協力研究院の梅新育(Mei Xinyu)研究員は述べた。梅研究員によると、中国のデジタル通貨の発展には多くの利点がある。一方では、中国はデジタル通貨の発展に必要なインフラ施設、支払いシステムを比較的完備させている。そのほか、中国では消費者や業者などの電子決済の受容度が高いという。

 デジタル通貨の主流化によって、紙幣や電子決済に取って代わることになるのだろうか。穆所長は、デジタル人民元の発行は行政による強制ではなく、市場化方式によって進められる。予見可能な将来においては、紙幣、電子決済、デジタル人民元の共存が見込まれると述べた。(c)People’s Daily/AFPBB News