東京五輪、中止すれば生じる財政的影響と泥沼
このニュースをシェア
■日本にとっての影響は?
大会予算の大部分はすでに執行されている。2020年末に発表された予算計画第5版によれば、開催費用は総額1兆6440億円とされているが、その半分以上が東京周辺の恒久施設への公共投資で占められている。
中止になれば、ケータリングや輸送、エネルギーインフラなどの大会運営コストや、選手村をマンションに改修する費用は削減できるが、何よりも収入がなくなってしまう。
日本はすでに断腸の思いで海外一般客の受け入れを諦め、900億円と見積もられた観戦チケットの売り上げの多くを逃している。国内の観客についてはまだ決定が下されていない。
また主催者側は、国内スポンサー企業への協賛金の一部返金が33億ドル(約3600億円)、IOC拠出金の払い戻しが13億ドル(約1400億円)など、莫大(ばくだい)な額を負担することになる。
■中止になった場合のIOCのコストは?
IOCはこれまで東京五輪で期待される収入を明らかにしたことがない。IOCの収入は4年サイクルで発表されるからだ。ソチ冬季五輪とリオデジャネイロ五輪が行われた2013~16年の収入は57億ドル(約6200億円)に上った。
その収入の4分の3は放映権によるもので、関係者の間では、東京五輪でIOCは少なくとも15億ドル(約1600億円)を受け取ると予想されている。だが、中止になった場合、放映権料は払い戻さなければならない。
残りの収入は世界のスポンサーからのもので、中止の場合は各パートナーと返金額について綿密な交渉が必要となる。
10億ドル(約1100億円)以上の蓄えがあるIOCが分配金とせずに手元に残す収入は10%のみだが、東京五輪による収入を奪われれば大打撃を受けることは間違いない。
またIOCから分配金を受け取っている各国内オリンピック委員会(NOC)や各競技の国際連盟は、コロナ流行ですでに厳しい財政状況にあり、スポーツ界全体が危機にさらされることになる。