【5月20日 AFP】ベルギーで、極右思想に傾倒し武装した軍人が著名な新型コロナウイルス専門家らへの脅迫文を残して行方をくらまし、警察や軍が大規模な捜索を行っている。この軍人は、対戦車ロケットランチャーを使用できる立場にあった。

 連邦検察庁は19日夜、ユルゲン・コニングス(Jurgen Conings)容疑者が潜伏しているとみられるベルギー北東部の国立公園に、約250人の警官と兵士を展開したと発表した。公園付近で18日夜に容疑者が乗り捨てた車が発見され、車内から「対戦車ロケットランチャー4基と弾薬」が見つかったという。

 コニングス容疑者は、ツイッター(Twitter)のアカウントで「フィットネスとボディービル、ボクシングが好きなベルギー空軍兵」と自己紹介し、たくましい体つきの上半身裸の写真をプロフィルに掲載している。

 当局によるとコニングス容疑者は、過激思想に傾倒している約30人のベルギー軍人の一人としてテロ対策当局の監視対象となっていたが、通常の軍務を継続し、海外派遣前の部隊の訓練指導も行っていた。

 アレクサンダー・デクロー(Alexander de Croo)首相は、コニングス容疑者が武器を使用できる状況にあったことについて「許されないことだ」と述べた。また、リュディビーヌ・ドゥドンデル(Ludivine Dedonder)防衛相は調査を開始する方針を示した。

 検察によれば、コニングス容疑者は政治家や著名人を脅迫するなど「懸念要素」を含む文書を残して姿を消した。脅迫の対象には、新型コロナウイルス流行下で国民に広く名が知られるようになった第一線の専門家、マルク・ファンランスト(Marc Van Ranst)氏が含まれている。

 ファンランスト氏はソーシャルメディアを積極的に活用しているが、その見解は陰謀論者やコロナ懐疑論者、フランドル地方の極右勢力の標的とされている。昨年9月にAFPの取材に応じた際、同氏は人種差別や外国人排斥を公に批判したことでナショナリストらの反感を買い、殺害予告を受けたと語っていた。(c)AFP/Matthieu DEMEESTERE