【5月28日 AFP】タイ首都バンコクのタクシー運転手ソーピー・シンパキット(Sopee Silpakit)さん(65)は、お祈りを唱えると、小さな仏像や僧侶の像などのお守り「プラクルアン」のペンダントを身に着け、タクシーに乗り込んだ。

 この一連の儀式がソーピーさんにとって、新型コロナウイルスが流行する中で心の支えになっている。

 タクシー運転手は仕事柄、毎日見知らぬ人と接する。バンコクは新型コロナ流行第3波の中心地となっており、ソーピーさんは毎日、不安を感じながら暮らしている。

「毎日お守りに祈っている。『ウイルスから守ってください』と」と、ソーピーさんはAFPに話した。

 タイの人々は迷信深い。

 さまざまな人がプラクルアンを集めており、起業家がポロシャツの下にプラクルアンのペンダントを着けている姿も珍しくはない。

 ソーピーさんのタクシーは、100を超える宗教用品が飾られている。精神的に守ってくれるものがあった方が、自分のタクシーにはウイルスがないと「自信が持てる」という。

 プラクルアンの収集や売買は非常に人気があり、バンコクの旧市街には専用の市場もある。有名な高僧が祈念したプラクルアンは高値で取引されている。

 プラクルアン市場は特に高齢者の間で人気が高い。このため政府は、新型コロナウイルスの感染対策としてここ1年、市場を閉鎖している。

「私が持っている中で一番高いのは約1万~2万バーツ(約3万5000~7万円)する」と、タクシー運転手のワサン・スクジット(Wasan Sukjit)さん(43)は話す。各地の珍しいプラクルアンをもらったという。ワサンさんのタクシーの天井には、僧侶が描かれた大きな布も張られている。

 悪名高い危険なタイの道路で事故に遭っても、プラクルアンのおかげで命拾いしたといった話から、タクシー運転手の間ではプラクルアンの御利益を信じる人がますます増えている。

 ワサンさんは、「お守りが飾ってある車が事故に遭ったが、運転手は小さな傷やかすり傷で済んだ」と話す。自分のタクシーに飾られたお守りなどの仏教用品は、顧客を引き付けるのにも役立っていると主張する。

「だけどもちろん、現実的かつ物理的に(新型コロナウイルスから)身を守るためには、マスクとアルコールジェルが必要だ」 (c)AFP/Pitcha DANGPRASITH